評     価  

 
       
File No. 1930  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2013年12月21日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   山崎 貴  
       
上 映 時 間   144分  
       
公開時コピー  
この空に願う、未来
壮大な愛の物語。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   岡田 准一 [as 宮部久蔵]
三浦 春馬 [as 佐伯健太郎]
井上 真央 [as 宮部松乃]
濱田 岳 [as 井崎]
新井 浩文 [as 景浦]
染谷 将太 [as 大石]
三浦 貴大 [as 武田]
上田 竜也 [as 小山]
吹石 一恵 [as 佐伯慶子]
田中 泯 [as 景浦(現代)]
山本 學 [as 武田(現代)]
風吹 ジュン [as 佐伯清子]
平 幹二朗 [as 長谷川(現代)]
橋爪 功 [as 井崎(現代)]
夏八木 勲 [as 賢一カ]
 
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あ ら す じ    2004年。佐伯健太郎はこの年も司法試験に合格できずに失意の日々を過ごしていた。祖母・松乃が他界し葬儀に参列するが、そこで祖父・賢一郎が人目もはばからずに大泣きするのに驚く。そして、賢一カとは血がつながっておらず、自分の本当の祖父は、松乃の最初の夫で太平洋戦争時に零戦パイロットとして出撃し、終戦間近に特攻隊員となり散った宮部久蔵という人物だったことを知るのだった。
 健太郎は姉・慶子に頼まれたこともあり、久蔵がどんな人物だったか調べようと、姉と共に久蔵のかつての戦友を訪ねてまわる。しかしその先々で、海軍一の臆病者といった手厳しい評判を聞く。しかし、やがて久蔵を良く知る人々武田井崎らの話を聞き、彼が類まれなる操縦センスを持ちあわせていたこと、それでいて敵の駆逐よりも生還を第一に考えていたことを知る。その理由は、久蔵が妻・松乃と娘・清子とかわした、家族の元に生きて戻るという約束があったためだった。
 それならなぜ久蔵は特攻の道を選んだのか。やがて久蔵の最期を知る人物・景浦から、驚くべき事実を知らされることになるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    同名ベストセラー小説を映画化した作品。観る前はあまり期待していないうえに、144分という尺の長さから睡魔に襲われるのではないかと心配だったが、観てみるとそんな心配はどこかへ吹き飛んでしまった。おそらく、ここ最近観た邦画の中ではトップクラスの作品ではないだろうか。
 吹石一恵と三浦春馬が演じる、現在に生きる慶子と健太郎の姉弟が、自分たちの血の繋がった本当の祖父のことを調べるという、一種の謎解きのような形式でストーリーが展開していくのが気に入った。夏八木勲扮する賢一カの家の表札をハッキリと映さないことで、最後のどんでん返しをより盛り上げようという意図にまんまと乗せられてしまったのには、むしろ爽快感を感じる。
 こういう作品を観るにつけ、ありきたりな感想だが戦争の悲惨さ、まるで熱病に冒されたかのような異常な雰囲気を感じさせられる。市川海老蔵主演の『出口のない海』に登場した人間魚雷・回天といい、この作品に登場するゼロ戦による片道切符の特攻といい、おおよそ人命の尊さを知る現代では考えられないような戦法。そんなことをしても所詮アメリカを筆頭とする連合国には太刀打ちできないのは火を見るよりも明らかなのに、誰もそのことを口には出さない。口にしたら最後、非国民として処罰されてしまうから。
 そんな気運の中で、この作品の主人公・宮部久蔵のように信念を貫き通すことは至難の業だったことは間違いない。同僚や部下からは臆病者と罵られ、上官には殴られ、いっそのこと周囲に流された方がどれだけ楽だったことだろう。そんな宮部を、演技達者な岡田准一がやや抑え気味の演技で見事に体現しているのはさすがだ。そんな宮部の周囲を、濱田岳、新井浩文、染谷将太、三浦貴大といった演技力のある若手で固めているのも成功の要因だろう。『謝罪の王様』では妙に不細工に見えた井上真央も、この作品では彼女本来の可愛らしさを充分に堪能できるのもいい。
 若手もいいが、この作品では橋爪功、田中泯、山本學、そしてこれが遺作となった夏八木勲らのベテランが、オジサンパワーはまだまだ健在だと言わんばかりに存在感を示しているのが素晴らしく、彼らなしではこの作品の感動も半減してしまう。それほど彼らの言葉に重みを感じるのは、やはり単なる演技力だけじゃない、長年にわたって年輪を重ねてきた賜物だろう。