なんだか、非常にもったいないという思いが後味として残った。前半の展開はスリル満点で、点数も満点をつけてもいいくらいだっただけに、三流のサスペンス・アクション映画のような結末がとても残念だ。
『恋するリベラーチェ』を観た時に、マイケル・ダグラスのピアノ演奏について「とても吹き替えには見えない。だとしたら、彼のピアノの技術は半端じゃない」なんて思ったが、この作品を観てやっぱり吹き替えなんだと思うことにした(笑)。いくら練習を積んだとしても、イライジャ・ウッドがあれほどまでにピアノを弾けるようになるとは絶対に思えないから。それにしても、改めて見ると、マイケル・J・フォックスもそうだけど、イライジャ・ウッドも背が低いことを痛感。妻のエマを演じたケリー・ビシェと並ぶシーンでは、その慎重さは歴然だ。
今回もまたまた悪役で登場のジョン・キューザックは、以前はその柔和な表情から器の穏やかな善人の役柄しか観たことがなかったが、今や完全に悪役が板についてしまっている。『ペーパーボーイ 真夏の引力』では、アカデミー主演男優賞のマシュー・マコノヒーを、あっという間に惨殺しちゃったし(笑)。確かに、見るからに悪そうなルックスの俳優よりも、見た目穏やかなルックスのジョンのような俳優の方が、悪役を演じると恐く感じるけど、それ一辺倒ってのもどうなんだろうね。それに、これだけ悪役が続くと、今後善人の役を演じても、何か裏がありそうだと勘ぐってしまいそうだ。
若き天才ピアニストと美人女優の夫婦、となると、得てして夫婦仲が微妙な状態だったりなどという枝葉がつきものだが、そんな余分な要素はすべてそぎ落とされているために、イライジャ VS ジョン・Q(ちなみに John Cusack だから正しくはジョン・Cです)の対決に集中できるのがいい。無線マイクを使ってのトムとスナイパーのやりとりは、トムがピアノを演奏しながらという状況だけに、いやでも緊迫感が増すというものだ。それにしても、ピアノを弾きながらスマホで電話をかけるのはまだしも、メールまで打って送信するとは驚きだ。