評     価  

 
       
File No. 2006  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2014年05月03日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ドゥニ・ヴィルヌーヴ  
       
上 映 時 間   153分  
       
公開時コピー   愛する娘を奪われた時、
父が踏み越えた一線とは。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ヒュー・ジャックマン [as ケラー・ドーヴァー]
ジェイク・ギレンホール [as ロキ刑事]
ヴィオラ・デイヴィス [as ナンシー・バーチ「]
マリア・ベロ [as グレイス・ドーヴァー]
テレンス・ハワード [as フランクリン・バーチ]
メリッサ・レオ [as ホリー・ジョーンズ]
ポール・ダノ [as アレックス・ジョーンズ]
ディラン・ミネット [as ラルフ・ドーヴァー]
ゾーイ・ソウル [as エリサ・バーチ]
エリン・ゲラシモヴィッチ [as アナ・ドーヴァー]
カイラ・ドリュー・シモンズ [as ジョイ・バーチ]
ウェイン・デュヴァル [as リチャード・オマリー署長]
レン・キャリオー [as パトリック・ダン神父]
デヴィッド・ダストマルチャン [as ボブ・テイラー]
 
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あ ら す じ    ペンシルヴェニア州で小さな工務店を営むケラー・ドーヴァーの幸せに満ちた日常は、何の前触れもなく暗転する。感謝祭の日、妻・グレイス、長男のラルフ、そして6歳の娘アナを連れ、ケラーは親友のフランクリン・バーチ宅を訪れる。そして、フランクリンの娘エリサとアナの2人が、外出したまま失踪してしまう。
 事件を担当することとなったロキ刑事は、両家族の証言からアレックス・ジョーンズ青年を容疑者として確保するが、彼が犯人であるという何の物的証拠も得られない上に、かれが10歳程度の知能しかないことが判明したために、2日後に釈放する。ところが、アレックスの釈放に納得できないケラーが、警察を出てくるアレックスに掴みかかった時、アレックスは「僕といた時は2人は泣かなかった」という思わぬ一言を漏らす。
 その一言に、アレックスが犯人だと確信したケラーは、愛する娘を取り戻したい一心から、越えてはいけない一線を越え決意をする。そして、アレックスを拉致し、自らの手で口を割らせようとするのだった。
 一方、ロキ刑事は新たな容疑者ボブ・テイラーを逮捕し、彼の家からは血の付いたアナとエリサの衣服が発見される。しかし、拘留中にテイラーが自殺してしまい、ロキ刑事は2人の少女の行方知る手がかりを失ってしまう。を事件は意外な方向へと転じていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ヒュー・ジャックマン×ジェイク・ギレンホールという組み合わせだけで、私にとっては「これは観なければ」と半ば義務感すら覚えてしまった作品。公開初日は『スチューデント・オブ・ザ・イヤー』の146分で疲れてしまうだろうと、敢えて公開2日目のレイトショーに臨んだが、そんな心配は全く無用で、『スチューデント』を上回る153分の尺にもかかわらず、眠気などは全く感じさせない秀作だった。
 ジェイク・ギレンホールが出演しているためか、どことなくイメージというか世界観が、『ゾディアック』とダブるようにも思えるが、中だるみを感じた『ゾディアック』に対して、この作品は最後まで緊張を強いられるのだが、それが苦痛に感じられないのだ。誘拐された2人の少女が助かるのか否か、そして、犯人は一体誰なのか?次にどう展開するのか予想もさせずに二転三転するストーリーは、久しぶりにサスペンス作品の醍醐味を満喫させてくれた。当然私もコイツが犯人じゃないの?と思いながら観ていたが、見事に見当外れだった。まぁ、犯人当ての推理作品じゃないから、その点はあまり重要じゃないけどね。
 「ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールの出演作で最高傑作」と評価したアメリカのメディアがあるようだが、それもあながち嘘じゃない。2人の熱演を観ていると、次第に演技じゃなく現実だと思えてくるのだ。愛する娘を救いたい一心で、越えてはいけない一線を越えてしまう、そんなヒュー・ジャックマン演じる父親ケラーの気持ちが痛いほど伝わってくる。そのためか、ポール・ダノ演じるアレックスに対する酷い拷問も、逆に応援したくなってしまうのはヤバいかな?(笑)そんなケラーの気持ちを察しながらも、あくまで法の範囲内で犯人を見つけ2人の少女を救おうと奔走する、ジェイク演じるロキ刑事が好対照だね。2人目の容疑者ボブ・テイラーを、自分のミスで死なせてしまった時の絶望感は、この作品での彼の最大の見せ場だろう。
 そして、一つ間違えば作品全体を台無しにしかねない役柄を、「この役は彼しかできない」と思いたくなるような好演を見せてくれている、若手のポール・ダノも忘れちゃいけない。『ないと&デイ』以来お目にかかる回数が増えた彼だが、個性派俳優への道をまっしぐらといったところだろうか。
 作品の原題・邦題共に“PRISONERS(プリズナーズ)”だが、調べてみるとこの単語には“囚人”という意味の他に“自由を奪われた人”“虜(とりこ)”という意味があるのは興味深い。娘を救うことの“虜”になり、周囲が見えなくなってしまっているケラー、そんなケラーに拉致されて“自由を奪われた人”となるアレックス。一見正反対の立場にいるような2人が、同じ単語で象徴されるのは面白い。