評     価  

 
       
File No. 2013  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2014年05月24日  
       
製  作  国   スペイン / ルーマニア / ロ シ ア / フランス  
       
監      督   マヌエル・マルティン・クエンカ  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー  
初めて、獲物を愛してしまった
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   アントニオ・デ・ラ・トレ [as カルロス]
オリンピア・メリンテ [as アレクサンドラ/ニーナ]
アルフォンサ・ロッソ [as オーロラ]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    スペイン南部グラナダのアパートメントで独身生活を送るカルロスは腕のいい仕立屋だが、誰も知らないもうひとつの顔を裏に隠し持っていた。美女ばかりを狙う連続殺人鬼である彼は、捕らえた獲物を人里離れた山荘で解体、その肉片を調理して“味わう”という禁断の行為を繰り返しているのだった。
 ある日、アパートメントの隣人であるルーマニア人女性アレクサンドラの挑発的な言動に心をかき乱されたカルロスは、良心の呵責を抱くこともなく彼女を殺めてしまう。ところが後日、アレクサンドラと瓜ふたつの女性がカルロスの前に現れる。彼女は、謎の失踪を遂げた妹を捜索する双子の姉・ニーナであった。
 そんな彼女の身の上に深入りしたカルロスは、ニーナへの愛と殺意の狭間で苦悩し、思いがけない運命をたどっていく・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    ポスターの画像が画像だけに、加えて「R18+」の視聴制限が付けられていることもあって、さぞかし扇情的な内容なのかと思っていたらそうでもない。また、猟奇連続殺人鬼が主人公だから、残酷なシーンが多いかと思ったらそれもない。意外に真面目に作られているのに、まずは好感が持てる。
 それにしても、通常女性を拉致して殺す連続殺人鬼といえば、その動機は色欲にあるのだが、この作品の場合は食欲が動機となっていて、その点にはさすがにちょっと引いてしまった。そう言いながらも、「食べるのが目的なら、別に美女じゃなくてもいいのでは?」だの「顔なんかじゃなくて、肉付きがいい女性を選ぶべきじゃないの?」なんて、冷静に考えている自分もちょっとショックだったけど(笑)。
 殺人鬼である主人公・カルロスを演じるアントニオ・デ・ラ・トレが、一見すれば虫も殺さないような紳士であるだけに、その二面性がより強調されて怖さが増すというものだ。そんな彼の前にオリンピア・メリンテ扮する美女・アレクサンドラが現れたて、間もなく行方不明になるのだが、彼女がカルロスに殺されたのか?それとも山荘に換金されているのか?と疑問を抱かせるような作りが巧い。
 カルロスはアレクサンドラの姉・ニーナに「人を愛さない」と言い、ニーナはそれを否定するが、おそらくは女性を殺しては文字通り餌食にするというカルロスの行動は、常軌を逸しているし、倒錯しているものの、それも美しい女性を永遠に独占したいという一種の愛情表現だったように思える。ただそれは、あくまでカルロスからの一方通行の愛ではあるけれど。
 そんなカルロスの日常の平静が破られるきっかけがアレクサンドラで、決定的っとなったのがニーナとの出会いだったのだ。今までのような一方通行じゃなく、与え与えられるという双方通行の愛情に、おそらくカルロスは最初は相当戸惑ったのだろう。だからあんな告白をしてしまい、結局はニーナを失ってしまう。そう、所詮異常な殺人者には、平凡で穏やかな愛などを手に入れられるはずはないのだから。