評 価
File No.
2039
製作年 / 公開日
2013年 / 2014年06月28日
製 作 国
アメリカ
監 督
スパイク・ジョーンズ
上 映 時 間
126分
公開時コピー
人生にときめく、AI(人工知能)。
声だけの君と出会って、世界が輝いた。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
ホアキン・フェニックス
[as セオドア・トゥオンブリー]
スカーレット・ヨハンソン
[as サマンサ(声の出演)]
エイミー・アダムス
[as エイミー]
ルーニー・マーラ
[as キャサリン]
オリヴィア・ワイルド
[as ブラインド・デートの相手]
クリス・プラット
[as ポール]
マット・レッシャー
[as チャールズ]
ポーシャ・ダブルデイ
[as イザベラ]
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あ ら す じ
近未来のアメリカ・ロサンゼルス。顧客の想いを代筆する“代筆ライター”の
セオドア・トゥオンブリー
は、妻
キャサリン
に去られ失意の日々を過ごしていた。見かねた友人の
エイミー
が彼に女性を紹介しようとしても、断る始末だった。
そんなある日、最新式のOS“OS1”の広告を目にしたセオドアは、早速自宅のPCにインストールする。すると、起動したPCから聞こえてきたのは、“
サマンサ
”と名乗る女性の声だった。それは、無機質で事務的なAIとは思えないほどユーモラスでセクシーで人間味に溢れていた。以来サマンサに魅了され、相談事や寝る前のささやかなやりとりをし、携帯電話に移して外出するなど、彼女と会話するひとときがかけがえのないものになる。
サマンサにとってもセオドアを通して見る外の世界は驚きに満ちていた。やがて2人の間に恋が芽生え、ついにセオドアはキャサリンとの離婚届にサインしようと決意する。しかし、再開したキャサリンの前でサマンサとの交際を打ち明けたことをきっかけに、セオドアとサマンサのそれぞれの想いがすれ違い、2人の関係に異変が生じていく・・・・・。
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たぴおか的コメント
スパイク・ジョーンズ監督がアカデミーオリジナル脚本賞を受賞ているが、サマンサの声を務めたスカーレット・ヨハンソンが、声だけの出演にもかかわらずローマ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したことの方が、私にとってはインパクトが大きかった。主演のホアキン・フェニックスは、2013年の『ザ・マスター』でオスカー主演男優賞にノミネートされているが、私見を言わせてもらうならば、この作品のセオドア役の方が、より主演男優賞にふさわしく思える。
美辞麗句を並べる手紙の代筆ライターのセオドアが、他人の気持ちを伝える仕事をしながら自分の気持ちを大切な相手に伝えるのが下手。仕事を終えて帰宅しゲームに興じるという、単調な日常を繰り返すセオドアが、最新OSの“OS1”にのめり込んでいくのは、自然な成り行きだろう。しかも、従来の無機質なOSじゃなく、人間以上に人間味あふれる、セクシーな女性の声とあっては、なおさらだ。スカーレット・ヨハンソンの声があれほどハスキーボイスだったとは今まで気づかなかったが、変にアニメ声だったり美声だったりするよりも、彼女の声はセオドアに、そして観客に訴えるところは大きい。この作品の成否はサマンサの声の演技に依るところが大きいだけに、スカーレットを起用したことで第一段階はクリアってところだろう。
セオドアがサマンサに夢中になるのは、同じ男性として理解できるし、一方でAIであるサマンサが人間の心を学習して、やはりセオドアに惹かれていくのもわかる。だが、一方は生身の人間、他方はOSというプログラム言語の集合体とあっては、その恋愛には越えることのできない壁がある。その壁から目をそらそうとするセオドアに対し、少しでも壁を越える努力をしようとするサマンサ、そんな温度差を生んだのは、生身の女性であるセオドアの妻・キャサリンに対するサマンサの嫉妬で、それがサマンサが人間に近づいたがために生じたためだとは皮肉なものだ。
サマンサが持ちかけた代理女性とのセックスも、サマンサにとっては間接的にセオドアと触れ合える手段なのだが、その理屈は生身のセオドアには通じない。埋めようとしたセオドアとサマンサの間の溝が、逆に深くなってしまう。そうなると、2人に破局が訪れることは必至なのだが、その理由が今ひとつハッキリしない。OS側の勝手な理由でPCからいなくなってしまうとは、販売会社に対して「金返せ」とも言いたくなるだろうが、それはセオドアにとっては金銭的な損害などは問題じゃなく、精神的な損害が計り知れないほど大きい。
ラストシーンは、ある意味そんなセオドアにとって救いのある、未来が感じられる終わり方ではあるけど、あの2人が結ばれることはあるのだろうか。互いに離婚して何の障害もなくなったセオドアとエイミー、2人にとってサマンサというOSの存在が果たした役割は?