評     価  

 
       
File No. 2043  
       
製作年 / 公開日   2014年 / 2014年07月05日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ロバート・ストロンバーグ  
       
上 映 時 間   97分  
       
公開時コピー  
邪悪な妖精マレフィセント
なぜ彼女は“呪い”をかけたのか?
誰も知らない「眠れる森の美女」がいま目覚める
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   アンジェリーナ・ジョリー [as マレフィセント]
エル・ファニング [as オーロラ姫]
シャールト・コプリー [as ステファン]
レスリー・マンヴィル [as フリットル]
イメルダ・スタウントン [as ノットグラス]
ジュノー・テンプル [as シスルウィット]
サム・ライリー [as ディアヴァル]
ブレントン・スウェイツ [as フィリップ王子]
ケネス・クラナム [as ヘンリー王]
サラ・フリンド [as レイラ王女の小間使い]
ハンナ・ニュー [as レイラ王女]
イゾベル・モロイ [as 少女時代のマレフィセント]
マイケル・ヒギンズ [as 少年時代のステファン]
エラ・パーネル [as 10代のマレフィセント]
 
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あ ら す じ    荒廃した人間の王国と、妖精たちが暮らす豊かなムーア国が隣り合って存在する世界。妖精のマレフィセントは、ある日人間の少年ステファンと恋に落ちる。しかし、月日は流れ、ヘンリー王に仕えるステファンは欲に目がくらみ、王の命によりマレフィセントを殺そうとする。しかし、彼女を殺すことができないステファンは、代わりに彼女の翼を切り取って王に届ける。こうして、ステファンはヘンリー王亡き後、後継者として王座に就く。
 やがてステファンと王妃レイラの間に、待望の子供が生まれる。オーロラと名付けられた姫の誕生を祝うパーティが開かれ、3人の妖精が次々と幸運の魔法をオーロラ姫にかけているその時、招かれざる客であるマレフィセントが現れ、オーロラ姫に呪いをかけてしまう。「16歳の誕生日の日没までに、姫は永遠の眠りにつくだろう。そして、真実の愛のキスだけが姫の眠りを覚ます」と。
 ステファンの命により、森の隠れ家で3人の妖精に育てられたオーロラ姫は、幸運の魔法の通り、幸せに包まれて美しく成長していく。その姿をいつも影から見守るのは、マレフィセントだった。そしてある日、ムーア国に入ろうとしたオーロラの前に、ついにマレフィセントが姿を現す。ところが、オーロラはマレフィセントを恐れるどころか、誰よりも彼女を慕うようになる。オーロラの優しい心に触れたマレフィセントは、自分が恨みと怒りに我を忘れていたことに気づくが時すでにおそく、彼女が呪いをかけた16歳の誕生日は目の前に迫っていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ディズニーの名作アニメ『眠れる森の美女』を、呪いをかけた張本人である邪悪な妖精マレフィセントの視点から描いたダーク・ファンタジー作品。『アナ雪』が16週連続の興行収入1位を続けている時期にこの大作を投入することになるとは、ディズニーも痛し痒しだろう。おそらく、『マレフィセント』のブッキングが決定した時には、『アナ雪』がまだ公開されていなかったからだろうが、もし公開されていたとしても、ここまでのロングランになるとは、おそらく誰も予想していなかっただろう。この週末にはトム・クルーズの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も公開されているから、果たして『アナ雪』は同じディズニー作品『マレフィセント』によって1位から引きずり下ろされるのか、それとも“日本原作+トム・クルーズ”に敗れるのか?週明けのランキングが楽しみだ。
 2D版と3D版が併映されているこの作品、例によって例のごとくTCX + DOLBY ATMOSでの上映が、レイトショーのちょうど都合いい時間にあったので、迷わず3Dで鑑賞。で、結論。この作品はできれば3Dで観ることをオススメしたい。『オズ はじまりの戦い』もそうだったが、この手のファンタジックな世界を描く場合、3D映像は非常に相性がいいようだ。極彩色の植物やクリーチャーたちが生き生きと動き、中でもマレフィセントが空を駆け巡るシーンは圧巻で、あのスピード感・臨場感はたまらない。
 予告編では「ディズニーがひた隠しにしてきた真実」なんて言ってるけど、夢もヘッタクレもないことを言っちゃえば、所詮無理矢理後付けでこじつけたストーリーなのは確か。だから、王子様のキスで目覚めるはずのオーロラが、意外な人物のキスで呪いから解かれたりしている。もっとも、私としては、意識のないオーロラに対して真実の愛だなんて、通りがかりの王子に求めることの方が無理があるわけで、この作品のストーリーの方が好きだ。ただし、3人の妖精たちに強制されて、半ば無理矢理オーロラにキスをする羽目になるフィリップ王子は、完全に道化役だけどね。
 マレフィセントを演じるのがアンジーだから、おそらくは“邪悪な妖精”というのは表面上のことで、その裏には止むに止まれず呪いをかけただろうことは想像するに難くない。事実マレフィセントは決して“邪悪な妖精”なんかじゃなく、むしろ邪悪なのは人間の方で、彼女は“邪悪な人間”の犠牲者だという新解釈だ。そんな“邪悪な人間”の典型を演じたのが、つい先頃『オールドボーイ』でお目にかかったシャールト・コプリーだ。この役者、『第9地区』はともかくとしても、『オールドボーイ』といいこの作品といい、善人を地でいくキャラよりも、どこか卑屈な曲者を演じる方が似合っているようだ。
 オーロラの前に現れたマレフィセントが、「誰にでも愛されるように」と自ら魔法をかけたオーロラに、どうしようもなく惹かれていく。そして、これもまた自らがかけた呪いのせいで、間もなくオーロラは永遠の眠りについてしまう。マレフィセントはまさに自縄自縛の状態に陥るわけで、そんなジレンマに苦しむ思いをアンジーが見事に演じてくれているから、私のような単純な人間はいともたやすく彼女に共感してしまう(笑)。この役柄、まさに彼女のハマリ役で、これを見せられてはもはや他の女優がマレフィセントを演じることはできないだろう。もっとも、続編を製作する余地があるような作品ではないけれど。