評 価
File No.
2046
製作年 / 公開日
2013年 / 2014年07月11日
製 作 国
ド イ ツ
監 督
バーナード・ローズ
上 映 時 間
122分
公開時コピー
音楽史上、
最も不道徳な
男が奏でる、
最も美しい旋律
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
デヴィッド・ギャレット
[as ニコロ・パガニーニ]
ジャレッド・ハリス
[as ウルバーニ]
アンドレア・デック
[as シャーロット・ワトソン]
ジョエリー・リチャードソン
[as エセル・ランガム]
クリスチャン・マッケイ
[as ジョン・ワトソン]
ヴェロニカ・フェレ
[as エリザベス・ウェルス]
ヘルムート・バーガー
[as バーカーシュ卿]
オリヴィア・ダボ
[as プリムローズ・ブラックストーン]
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あ ら す じ
1830年、イタリア。不世出の才能に恵まれながらもスポットライトを浴びることなく不遇の日々を送っていた天才ヴァイオリニスト、
ニコロ・パガニーニ
。ある日、その才能に目を付けた
ウルバーニ
と名乗る男が現われ、パガニーニを世紀のヴァイオリニストにすると宣言し、マネージャーを買って出る。そして巧みなイメージ戦略で、瞬く間に彼をヨーロッパ随一のヴァイオリニストへと導いていく。
しかし富と名声を手にしたパガニーニは、酒と女とギャンブルの放蕩三昧に明け暮れる日々を送る。そんな中、噂を聞きつけたイギリスの指揮者
ジョン・ワトソン
に招かれ、ロンドンへとやって来たパガニーニ。彼はそこで、歌手を目指すワトソンの娘
シャーロット
と出会い、その歌声に思いがけず心打たれるのだったが・・・・・。
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たぴおか的コメント
実は小学生から高校までヴァイオリンを習っていた私としては、欧米で絶大な人気を誇るというデヴィッド・ギャレットの演奏に非常に興味があった。そして、私が認識していたパガニーニは作曲家としてで、天才的なヴァイオリニストだとはこの作品と出会うまでは知らなかったから、ますます彼の演奏を聴きたくなった。ということで、TOHOシネマズシャンテで『ジゴロ』とこの作品を2本連続して観る羽目になった。
この手の作品、俳優が演じてヴァイオリンの演奏シーンを吹き替えるというのが通例だが、本物のカリスマ・ヴァイオリニストが演じるだけに、その演奏シーンは観ていて背筋に鳥肌が立つほどだ。激しくそれでいて繊細な演奏、まるで弓が弦に吸い付いたような、弓のアップとダウンの切り返しがわからないほどのなめらかな音色。彼の演奏を私のようなド素人がとやかく言うのはおこがましく、ただただ驚嘆と感動が入り混じった思いでスクリーンから目が離せず、もはや映画を観ているというよりも、彼のコンサートに酔いしれるという方が正しかったかもしれない。
弓を持つ右手で弦を弾く奏法をピチカート(
pizzicato
)というが、弦を押さえる左手の指でのピチカートとは恐れ入った。実際にヴァイオリンを弾いていた私も、左手のピチカートなんて聞いたこともなかった(もっとも、私の演奏などそんな真似ができるほどのレベルにはほど遠かったから)。開放弦ならともかく、ちゃんと弦を左手で押さえながら、空いている指でピチカートだなんて、もう神業と言うしかないね。
ヴァイオリンの演奏は神懸かり的なものがあるパガニーニだが、コピーにあるような“音楽史上最も不道徳な男”だとは思えない。確かに、酒とギャンブルに溺れ金銭感覚はゼロだが、天才と呼ばれるような人間は、どこか性格が破綻しているもの。そんな男だからこそ、ヴァイオリンを持った時には悪魔的な才能を発揮できるのだ。私生活でも几帳面で欠点がないなんてキャラクターだったら、おそらくは天才と呼ばれることはなく、せいぜい努力を重ねてたどり着く秀才が関の山だ。ゼロ・サム理論じゃないけど、常識人として何かが欠落しているからこそ、それを補って余りあるヴァイオリンの才能が与えられたのだ。