評     価  

 
       
File No. 2091  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2014年10月03日  
       
製  作  国   ド イ ツ / ハンガリー  
       
監      督   ヤーノシュ・サース  
       
上 映 時 間   111分  
       
公開時コピー   僕らは書き記す。
この眼に映る、真実だけを。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   アンドラーシュ・ジェーマント [as 双子]
ラースロー・ジェーマント [as 双子]
ピロシュカ・モルナール [as 祖母]
ウルリク・トムセン [as 将校]
ウルリッヒ・マテス [as 父]
ジョンジュヴェール・ボグナール [as 母]
 
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あ ら す じ    第二次世界大戦末期の1944年8月14日。双子の兄弟に連れられ、村人から“魔女”と呼ばれる祖母が暮らす国境に近い田舎へ疎開する。祖母の家の敷地には川があり、その先いは隣国との国境があった。兄弟に与えられた仕事は、薪割りと水汲み、そして鶏や豚への餌やりだった。
 兄妹は仲良くなった隣家の少女と一緒に、町の酒場で寸劇などをして小銭を稼ぎめる。また、森の中では兵士の遺体を発見し、そこから武器を盗む。その一方で、母親が自分たちに送ってくれた物資を祖母が隠していたことを知る。いつまでも迎えに来ない母親を忘れるため、精神を鍛える訓練で母の手紙と写真を焼き、残酷さに慣れる訓練として虫や魚などの生き物を殺す。兵士の遺体から奪った手榴弾を司祭館のストーブに投げ入れた兄弟は、女中に大火傷を負わせたことから警察に連行され、拷問を受ける。
 2人を助けたのは、祖母の家の離れに住む外国人将校だった。戦争が終わったとの噂を耳にして、祖母と一緒に収容所を見に行くが、そこには何も残っていなかった。そして、外国語を話す軍隊がやって来る。その戦車に乗せてもらった隣の女の子は、死体になって帰ってきた。死にたいと言う女の子の母親の求めに応じて、家に火を点ける兄弟。やがて、赤ん坊を抱いた母親が車でやって来るが、空から落ちてきた爆弾で赤ん坊とともに命を落としてしまう。
 2人の遺体を埋めていた祖母が、発作を起こして倒れる。そこへ、兵士として戦っていたが現れ、墓地に埋葬するために母の遺体を掘り起こすが、その際に赤ん坊の存在を知る。そして祖母が亡くなる。言われた通りに祖母の遺体を清め、母親の隣に埋めた兄弟は翌朝、逮捕を逃れるために逃亡を図る父親を国境の鉄条網へと案内する。だがそれは、2人にとって“別れ”という最後の訓練でもあった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    悪童といっても、戦時下という特殊な状況が強いたことで、生きていくためには仕方のないことじゃないのか、なんて思って観ていたのは前半だけで、中盤以降はこの双子の兄弟、恐るべき本性を現してくる。その悪童ぶりといったら、もはや子供の悪ふざけなんてレベルを遙かに超えていて、善悪の基準を失った冷血動物としか言いようがない。
 互いに痛みに耐えるために殴り合う訓練(「訓練」という言葉には大いに疑問を感じるが)や、哀しみに耐えるために生き物を殺す訓練、その辺りで納めておけば、まだ理解の範囲内だっただろう。だがこの兄弟、殺人未遂を1件、殺人を1件やってのけているのだ。しかも、何の恨みもない、世話になったはずの司祭感の女性を爆死させようとした、その動機が理解できないし、したいとも思わない。もはや人間的な感覚が麻痺してしまっているとしか思えない。「悪童」という言葉で安易に片付けるわけに行かない、人の皮を被った悪魔とでも言う方がふさわしく思える。
 2人が最後にとり組む「別れ」という訓練、それは今まで支え合って生きてきた兄弟の別れだと思っていたら・・・・・真相を知ってしまうと呆然とするしかない。そして、父の屍を文字通り乗り越えて行くその行動には、嫌悪感と怒りを禁じられない。
 そんな兄弟に比べれば、「魔女」と呼ばれる祖母の方が、まだ人間味がある。演じているピロシュカ・モルナールの凄さは特筆すべきだ。