評 価
File No.
2169
製作年 / 公開日
2014年 / 2015年02月14日
製 作 国
アメリカ
監 督
ベネット・ミラー
上 映 時 間
135分
公開時コピー
なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
スティーヴ・カレル
[as ジョン・デュポン]
チャニング・テイタム
[as マーク・シュルツ]
マーク・ラファロ
[as デイヴ・シュルツ]
シエナ・ミラー
[as ナンシー・シュルツ]
ヴァネッサ・レッドグレーヴ
[as ジャン・デュポン]
アンソニー・マイケル・ホール
[as ジャック]
ガイ・ボイド
[as ヘンリー・ベック]
ブレット・ライス
[as フレッド・コール]
ジャクソン・フレイザー
[as アレキサンダー・シュルツ]
フランシス・J・マーフィ3世
[as ウェイン・ケンドール]
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あ ら す じ
レスリングオリンピック金メダリストでありながら、練習環境にも恵まれず苦しい生活を送っている
マーク・シュルツ
は、ある日デュポン財閥の御曹司
ジョン・デュポン
からソウル・オリンピック金メダル獲得を目指したレスリングチーム“フォックスキャッチャー”の結成プロジェクトに誘われる。自身のトレーニングに専念できること、そして彼が崇拝する兄
デイヴ・シュルツ
の影から抜け出すことを願うマークにとってそれは夢のような話であった。
名声や孤独、欠乏感を埋め合うよう惹き付け合うマークとデュポンだったが、デュポンの移り気な性格と不健全なライフスタイルが徐々に二人の風向きを変えていく。そんな中、マークと同じ金メダリストであるデイヴがチームに参加する。だが、次第にデュポンの秘めた狂気が増幅され、誰もが予測できなかった事態へと発展していくのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
アメリカで実際に起きた事件をモチーフに描かれた作品で、『カポーティ』『マネーボール』と実話ものを得意とする(てか、実話ベースの作品しか監督してない ^-^;)ベネット・ミラー監督がメガホンを執ったとあれば、期待を裏切られることはなかろうと思いながら劇場へ。不思議なことにオスカーは主演男優賞(スティーヴ・カレル)、助演男優賞(マーク・ラファロ)、そして監督賞の3部門にノミネートされてはいるが、作品賞は対象外のようだ。
あのコメディ俳優スティーヴ・カレルが、コミカルな演技を一切封印してジョン・デュポンを演じたこの作品、間違いなくスティーヴにとってのターニング・ポイントになる作品だろう。一見誰がジョン・デュポンを演じているのかわからない、それほど形相まで今までのコメディ作品のキャラクターとは全く違う。その何を考えているのかがわからず、喜怒哀楽のうち「怒哀」しかないその表情を観ていると、いつどこで爆発するのかが気が気じゃなく、観る者の不安感をかき立てる。
そんな何不自由のない大金持ちのボンボンであるジョンが、どういった風の吹き回しなのか、チャニング・テイタム扮するマーク・シュルツらレスラーへの支援を始める。それは、表面上は有り余る金の使い道がなくて道楽半分で始めた気まぐれとしか思えなのだが、始まりはどうであれ、マークと二人三脚で世界大会を制覇した辺りまでは、確かにジョンとマークの間には絆が生まれていたのは確かだ。ただ、節制を心がけるアスリートに、酒はおろかコカインまで勧めるのはどうかと思うけど。
人と人との良好な関係は長くは続かないもので、えてしてほんの些細な綻びから崩壊してしまう。特に、ジョンは世界一のレスラーのコーチという名声を欲し、マークはオリンピックでの金メダルを目指という、一見同じベクトルを向いているように思えて、実はそうじゃない場合には。そのきっかけとなったのが、ジョンが執拗に執着したマークの兄・デイヴの招聘に成功したことだというのは皮肉なものだ。デイヴによって、いかにレスリング経験者とはいえ素人同然だったジョンのコーチとしての地位は揺らぎ、マークを失ってしまったのだ。ついに事に及ぶその直前のジョンの脳裏に浮かんだ光景は、おそらく後悔してももはや戻ることができない、彼にとっての至高の時間だったのだろう。