評     価  

 
       
File No. 2171  
       
製作年 / 公開日   2014年 / 2015年02月21日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   クリント・イーストウッド  
       
上 映 時 間   132分  
       
公開時コピー   米軍史上最多、
160人を射殺した、
ひとりの優しい父親。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ブラッドリー・クーパー [as クリス・カイル]
シエナ・ミラー [as タヤ・カイル]
ルーク・グライムス [as マーク・リー]
ジェイク・マクドーマン [as ビグルス]
ケヴィン・レイス [as ドーバー]
コリー・ハードリクト [as “D”]
ナヴィド・ネガーバン [as アル=オボーディ師]
カイル・ガルナー
ベン・リード [as ウェイン・カイル]
エリース・ロバートソン [as デビー・カイル]
ブランドン・サルガド・テリス
キーア・オドネル
マーネット・パターソン
サミー・シーク
ティム・グリフィン
ルイス・ホセ・ロペス
ブライアン・ハリセイ
ミド・ハマダ
ケーテ・メイザー
サム・ジェーガー
チャンス・ケリー
ロバート・クロットワーシー
 
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あ ら す じ    米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊し、イラク戦争に狙撃手として派遣されたクリス・カイル。その任務は“どんなに過酷な状況でも仲間を必ず守ること”。狙撃精度の高さで多くの仲間を救ったクリスは “レジェンド”の異名を轟かせるまでになる。しかし、敵の間にもその腕前が知れ渡り、“悪魔”と恐れられるようになった彼の首には18万ドルの賞金が掛けられ、彼自身が標的となってしまう。
 一方、妻のタヤ・カイルや子供はクリスの無事を願い続けていた。家族との平穏な生活と、想像を絶する極限状況の戦地。愛する家族を国に残し、終わりのない戦争は幾度となく彼を戦場に向かわせる。過酷なイラク遠征は4度。度重なる戦地への遠征は、クリスの心を序々に蝕んでいく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    御年84歳になりながら一向に製作に対する情熱を失わない、クリント・イーストウッド。つい先頃『ジャージー・ボーイズ』を送り出したかと思ったら、半年と経たずに次の作品とは、その底知れないバイタリティにはほとほと感心させられる。“映画の申し子”って言葉は、この人のためにあるんじゃないだろうか。
 アメリカのイラク侵攻について、私たち日本人はテレビの報道で上辺だけは知ったつもりでいるが、その裏側では多くの尊い命が失われていることを、ともすれば見過ごしがちだ。また、無事死なずに済んだものの、CSR(= Combat Stress Reaction/戦争後遺症)を患う兵士も少なくないと聞く。
 であるから、おそらくはクリス・カイルという実在の人物の体験を通じて、この作品にこめられているのはイーストウッドの反戦あるいは厭戦といった主張であることは想像がつく。そして、この作品を観終えて気づいたのは、全編を通して「戦争反対」といった主張を押しつけられることがなく、イーストウッドはただ淡々と情景を描写しているだけなのだ。これ見よがしに「反戦」を前面に押し出してしまうと、それが鼻について観客から煙たがられることもあるだろう。その点この作品は、あくまで事実だけを提示して、それをどう解釈するかは観客の想像に委ねるというバッファを与えてくれているように思えるのだ。
 クリスはあくまでスナイパーで、舞台を後方から援護するだけだと思っていたら、実際には敵のスナイパーの標的になるような行動もとっていたとは想定外。ただ、彼の見せ場はあくまでも遠方からの正確な射撃で、オリンピック金メダリストだという敵スナイパーを撃つシーンは緊張もピークに達し、その後には快い爽快感が感じられた。さすが“伝説”の面目躍如といったところだろう。
 主演のブラッドリー・クーパーは、役作りのためとはいえ、随分とウエイトを増やしたものだと驚いた。完全に中年オヤジ体型じゃん(笑)。でも、その分顔つきも丸みを帯びて、家族思いの優しい父親にふさわしい顔つきになっている。この作品で2年連続のオスカーノミネーションとなっているが、今年はマイケル・キートンにエディ・レッドメインの2人が鉄板だから厳しいだろうな。この作品、主演男優賞と作品賞にはノミネートされているのだが、イーストウッドが監督賞から漏れているのは意外。