評     価  

 
       
File No. 2179  
       
製作年 / 公開日   2015年 / 2015年03月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   成島 出  
       
上 映 時 間   121分  
       
公開時コピー   嘘つきは、大人のはじまり。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   藤野 涼子 [as 藤野涼子]
板垣 瑞生 [as 榊原和彦]
石井 杏奈 [as 三宅樹理]
清水 尋也 [as 大出俊次]
富田 望生 [as 浅井松子]
前田 航基 [as 野田健一]
望月 歩 [as 柏木卓也]
西村 成忠 [as 井上康夫]
西畑 澪花 [as 倉田まり子]
若林 時英 [as 向坂行夫]
加藤 幹夫 [as 橋田祐太郎]
石川 新太 [as 井口充]
佐々木 蔵之介 [as 藤野剛]
夏川 結衣 [as 藤野邦子]
永作 博美 [as 三宅未来]
黒木 華 [as 森内恵美子教諭]
田畑 智子 [as 佐々木礼子]
池谷 のぶえ [as 松子の母]
塚地 武雅 [as 松子の父]
田中 壮太郎 [as 茂木悦男]
市川 実和子 [as 垣内美奈絵]
江口 のりこ [as 大出俊次の母]
森口 瑤子
安藤 玉恵 [as 高木学年主任]
木下 ほうか [as 楠山教諭]
井上 肇
高川 裕也
中西 美帆
宮川 一朗太
嶋田 久作
津川 雅彦
余 貴美子 [as 上野素子校長]
松重 豊 [as 北尾教諭]
小日向 文世 [as 津崎正男校長]
尾野 真千子 [as 中原涼子]
 
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あ ら す じ    ある春の日、20年以上の年月を経て再び母校である城東第三中学に足を踏み入れた中原涼子上野素子校長に挨拶を終えた彼女は、校長から催促されるままに、かつて彼女がこの学校の生徒だった頃に起きた、伝説的な事件の全容について語り始める。
 記録的な大雪が降ったクリスマスの朝。ウサギの世話をするためにクラスメイトの野田賢一と共に早めに登校した2年A組の藤野涼子は、校庭で同じクラスの生徒・柏木卓也の遺体を発見する。津崎正男校長は警察の見解を受けて自殺だと断定するが、数日後に「彼は同じ2年の大出俊次ら3人に屋上から突き落とされて殺された」という、目撃者を名乗る者からの告発状が学校に届き、事件の波紋は広がる。警察は告発状が三宅樹理浅井松子によって創作された物だと断定し、学校もこれを受けて生徒には告発状の存在を隠したままに穏便に解決しようとする。
 ところが、告発状は1通だけではなく、父藤野剛が警察官である涼子の元と、2年A組の担任である森内恵美子教諭にも送られていた。しかも、森内教諭宛の告発状は、なぜか彼女の目に付かずに破り捨てられたものをマスコミ宛てに何者かが送りつけたため、学校に記者の茂木悦男が取材に訪れ、告発状の存在は生徒たちはおろか父兄にまで知れ渡ってしまう。
 マスコミの報道が熱を帯び、学校内に混乱が深まる中、浅井松子が事故で死亡するという事件が学校に追い打ちをかける。ますます深まる謎に対し、あくまで自殺と単なる交通事故で片付けようとする学校。涼子は保身ばかりを考える大人たちに見切りをつけ、北尾教諭の強力な後ろ盾のもと、柏木卓也の小学生時代の友人である 榊原和彦の協力を得て、学校内裁判を開廷して事件の真実を明らかにしようと動き始める・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    宮部みゆきの同名ベストセラー小説を映画化したサスペンス作。原作は第一部・事件、第二部・決意、第三部・法廷の各々が上下巻の2巻に分かれた、計6巻にも及ぶ大作で(この事実を知って、是非原作をちゃんと読もうと思っていたのを諦めた)、これを前篇・後篇の2作で網羅しようというんだから、そのはしょり方は相当なものだろうと想像できる。原作のファンの期待に応えられるような出来になっているのかどうかはわからないが、少なくとも前篇を観た限りでは、後篇に期待を持たせつつ、物語の導入部として充分に楽しめる内容に仕上がっているとは思う。ただ、すべてを後篇に委ねているために、前篇単独での評価はし難い作品であることは確かだ。
 これは映画の出来が云々といったことじゃなく、あくまで原作に対して言いたいのだが、刑事裁判は真実を明らかにする場所なんかじゃない。だったら、裁判は何をする場所なのか?と尋ねられれば、「裁判とは疑わしき人物(=被告人)を処罰すべきか否かを決める場所だ」と答えたい。そもそも、真実を知るのは被告人だけなのだから、何が真実かを裁判で明らかになどできるはずがない。しかも、原告である検察官も人間ならば、判決を申し渡す判事もまた人間で、彼らはそれぞれの利害関係に縛られている。検察官は、起訴した以上は必ず被告人を有罪にしなければならないし、判事もまた控訴審や上告審で自らの判決を覆されるようなことがあってはならないのだ。だから、そんな人間たちによって行われる裁判で、真実など明らかになるはずがない。百歩譲って裁判が真実を明らかにするものであったとしても、そこでは被告人が無罪であるか有罪であるかが決まるだけで、もし被告人が無罪だった場合に、真犯人を明らかにするような場でもないのだ。
 偉そうにご託を並べてしまったが、私が書いた程度の理屈を宮部氏が知らないはずはなく、おそらく後篇では私が予想も出来ないような形で真実が明らかになるんじゃないか、と後篇への期待を大いに抱かせる前篇だった。登場する生徒たちは全員がオーディションで選ばれた新人とのことで、「あ、またコイツがこんな役で出てるよ」なんてことがないのが新鮮だ。中でも、藤野涼子役を演じる藤野涼子(どうやら、この作品の役名でデビューすることになったらしい)は、さすがに主役に抜擢されただけあって、既に素人感を全く感じさせない演技達者だ。生徒たちがフレッシュな分、脇役はなかなかの豪華キャストで固められている。佐々木蔵之介を筆頭に主演クラスの俳優を惜しみなく投入したような顔ぶれだ。その中で、森口瑤子、宮川一朗太、そして津川雅彦が出演していたのには全く気づかなかった。おそらく津川は代々の校長の写真の1人じゃないかと思うが、残りの2人はどのシーンで出ていたかさえ想像もつかない。こういうことがあると、またついつい2回目を観に行っちゃうんだよね(笑)。
 題材が同級生の死だけに結構生々しい内容ではあるが、それでもこういう学園を舞台にした作品を観ていると、自分の中学時代とダブるようなところが随所に見られて、「あの頃の自分はつくづく馬鹿だったなぁ」と恥ずかしさと懐かしさが半々で思い返される。家具や電化製品など、当時の状態を再現するのはさぞかし大変だっただろうな。