評     価  

 
       
File No. 2219  
       
製作年 / 公開日   2013年 / 2015年05月16日  
       
製  作  国   イギリス / ルーマニア / フランス / アメリカ  
       
監      督   テリー・ギリアム  
       
上 映 時 間   107分  
       
公開時コピー   本当の幸せは、限りなくシンプルなものである。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   クリストフ・ヴァルツ [as コーエン・レス]
デヴィッド・シューリス [as ジョビー]
メラニー・ティエリー [as ベインズリー]
ルーカス・ヘッジズ [as ボブ]
マット・デイモン [as マネージメント]
ベン・ウィショー [as 医師]
ティルダ・スウィントン [as 精神科医]
グウェンドリン・クリスティー [as 街頭CMの女性]
ルパート・フレンド [as 街頭CMの男性]
レイ・クーパー [as 街頭CMの男性]
リリー・コール [as 街頭CMの女性]
サンジーヴ・バスカー [as 医師]
ピーター・ストーメア [as 医師]
 
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あ ら す じ    近未来の世界。天才プログラマーのコーエン・レスは、コンピューターで世界を支配する大企業、マンコム社で「エンティティ解析」という高度なデータ解析の仕事に就きながら、人生の意味を教えてくれる一本の電話がかかってくる瞬間を待ちわびていた。マンコム社の代表取締役であるマネージメントへの面会を求めていたコーエンは、ある日、上司のジョビーが開催したパーティにいやいやながら出席する。そこでようやくマネージメントに会うことができた彼は、会社に出勤せず、在宅勤務をしたいと要求する。
 マネージメントはこの申し出を渋々認め、コーエンは自身が住む荒廃した教会にこもって仕事を始める。彼の新たな任務は「ゼロの定理」を証明するという、ハードかつ困難な作業だった。コーエンは何か月もかけてこの仕事に集中するが、一向に答えは見つからず、待望の電話がかかってくる気配もない。ストレスが遂にピークに達し、彼は仕事で使用していた大切なスーパーコンピューターを壊してしまう。
 そんなとき、以前ジョビーのパーティーで出会ったミステリアスで魅力的な女性、ベインズリーが不意に彼の元を訪れる。陽気で優しく彼を理解してくれるベインズリーに、人間嫌いのコーエンは次第に心を開き始める。さらに数日後、壊れたコンピューターの修理をしにマネージメントの息子ボブが現れ、「ゼロ」に隠された驚くべき秘密をコーエンに明かす・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    2009年の『Dr.パルナサスの鏡』以来だから、日本での公開は6年ぶりとなる、鬼才(奇才?)テリー・ギリアムの監督作。彼の作品は、得てして真剣に向き合ってガチで受け止めようとすると見えなかったものが、一歩距離を置いて俯瞰で眺めてみると見えてきたりするんだよね。
 そもそも、クリストフ・ヴァルツ演じる主人公のコーエンが、一人称を“我々”なんて言うもんだから、「え?他に誰がいるの?」なんていきなり面食らわせられてしまう。そして、なぜ一人称が“私”じゃなく“我々”なのか?なんて考え出すと先へ進めなくなってしまうし、考えても答えなんて存在しないのだ。
 この作品はどうやらコメディではないようなのだが、そんな作品をもコメディにしてしまうとは、クリストフ・ヴァルツ恐るべし(笑)。『イングロリアス・バスターズ』以来、彼が演じるキャラクターは、どれをとっても観ていて退屈させないんだよね。そして彼以外に、この作品には意外なビッグネームが意外なキャラクターを演じているのもミソ。ティルダ・スウィントンは『スノー・ピアサー』を観ているおかげですぐにわかったが、ベン・ウィショーやマット・デイモンは、出演している事に全く気づかなかった。特にマット・デイモンが演じたキャラは、奇妙なメイクだとは思ったが、よく観ても最後まで誰が演じていたのかわからなかった。果たして、予備知識無しで彼に気づいた人なんているのだろうか?
 クリストフ・ヴァルツがこの作品でスキンヘッドなのはポスター等で知っていたけど、いきなり全裸でスクリーンに登場して、強烈なジャブを食らわされる。そして、そんな格好で何をやっているかというと、「エンティティ解析」とかいう得体の知れない作業なのだが、これがどう見てもゲームに興じているとしか思えない。その辺りの設定は、テリー・ギリアムの発想とクリストフ・ヴァルツの存在感が相俟って、奇妙さの中にも斬新な感覚を覚える。まさにギリアム・ワールド全開といったところだろうか。
 ベインズリー役のメラニー・ティエリーの存在が光っていて、下手をすれば野郎臭くなりがちな作品に、一抹の清涼剤の役割を果たしてくれているのに救われる。今後、スクリーンで彼女を目にする機会が、キット増えるんだろうな。