評     価  

 
       
File No. 2311  
       
製作年 / 公開日   2015年 / 2015年11月21日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   三宅 喜重  
       
上 映 時 間   108分  
       
公開時コピー   それでも好きと
伝えたかった
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   玉森 裕太 [as 向坂伸行]
西内 まりや [as 人見利香]
森 カンナ [as ミサコ]
阿部 丈二 [as 井出広太]
山崎 樹範 [as 向坂宏一]
片岡 愛之助 [as 澤井徹]
矢島 健一 [as 人見健次郎]
麻生 祐未 [as 人見由香里]
大杉 漣 [as 向坂豊]
高畑 淳子 [as 向坂文子]
 
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あ ら す じ    東京で食品会社の営業として働くことになった向坂伸行は、大阪の実家で部屋を片付けていた時、高校時代に愛読していた小説『フェアリーゲーム』の下巻がないことに気付く。その結末を思い出そうとネット検索して辿り着いたのは、都内在住の“ひとみ”というハンドルネームの女性の“レインツリーの国”という名のブログだった。『フェアリーゲーム』に対するひとみの感想に親近感を覚えた伸行は彼女にメールを送信し、これをきっかけにメールを通じた2人の交流が始まる。
 やがてある日、伸行はひとみに思い切って“会いたい”と告げると、ひとみからの返信が途絶えてしまう。早まり過ぎたと後悔する伸行にひとみから連絡があったのは、それから5日後のことだった。メールに書かれた“会いたい”と言う言葉に舞い上がる伸行。2人はLINEでのやり取りを始め、そこで伸行ははじめてひとみが彼女の名前ではなく名字で、人見利香というフルネームであることをを知る。そして訪れた初デートの日、伸行はひとみとどこかかみ合わないちぐはぐさに戸惑うが、別れ間際にそれが決定的となる事件が起きる。
 映画を観ての帰り際にエレベーターに乗った際、重量オーバーのブザーが鳴るのに降りようとしないひとみに苛立った伸行は、ひとみの手を取り強引にエレベーターから連れ出すと、勢いで怒りをぶつけてしまう。「ごめんなさい」と頭を下げたひとみの耳には補聴器があった。この時、初めて伸行は彼女が聴覚に障害を持つことを知るのだった。
 ひとみに謝罪のメールを送った伸行は、彼女が事故で高音域が特に聞き取り難くなる感音性難聴であることを知らされる。伸行はひとみに“リベンジデート”を提案し、それは初めこそいい雰囲気だったものの、あることがきっかけで大ゲンカになってしまう。伸行も深く傷つくが、ひとみに対する想いは変わらなかった。一方、ひとみはある日会社でセクハラを受け、伸行に会いたくなって職場の前まで足を運ぶが、同僚のミサコと一緒にいる姿を目撃して、そのまま帰宅してしまう。再び心を閉ざしたひとみは、ブログを休止してしまうのだった。
 そんなひとみに、伸行はあるメッセージを送る。果たして、伸行の想いはひとみの固い殻を破ることができるのか?傷つき迷う2人が本当の意味で障害を乗り越えた時、現実の世界に“レインツリーの国=ときめきの国”を見つけられるのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    さすが『阪急電車』の原作者・有川浩&同じく『阪急電車』の監督・三宅喜重のタッグだけあって、ソツなく仕上がっているなぁ、というのが第一印象。実はこの作品、会社の後輩に頼まれて初日舞台挨拶のチケット獲得にトライしたのだが、チケットぴあのプレリザーブの抽選に外れ、同じくチケぴの本予約もネットが繋がらず、1分後にやっと繋がったかと思ったら既に完売してしまっていたという、トンデモない倍率だったという曰く付きの作品だ。
 私は西内まりやは観てみたいが玉森裕太はどーでもいいので、込みそうなライブビューイング(舞台挨拶の同時生中継。『踊る大捜査線』で一度経験した)が実施される回を避けて、最もすいていそうな夕方の回に臨んだのだが・・・・・一体何なんだ、あの観客数は!?すいているどころの話じゃない、最寄りのTOHOシネマズで最大の客席400を超えるスクリーンで、観客はわずか20名足らず。このスクリーンでこれほど客数が少なかったのは、初日か否かを問わず今回が初めてだ。さらに男性は私ひとりだけで、あとは全員が女性という客層だったが、いかに玉森目当てで訪れる客が多いかということを思い知らされた。
 映画初主演の玉森裕太と西内まりやのが演じる伸とひとみは、フレッシュ感があふれていて悪くない。特に、西内まりやの細かい仕草や表情からは、ひとみの気持ちがひしひしと伝わってきていい。健常者に対して一種の壁を作ってその中にこもってきた彼女が、徐々にその壁を取り払って外へ出る、その壁の象徴が彼女の長い髪だったんだな、としみじみ感じた。
 一方の玉森裕太だが、東京出身の彼の関西弁も悪くない・・・・・と最初は思っていたのだが、彼の母親を演じた高畑淳子の関西弁を聞いてしまうと、演技している感は隠し通せないな。
 これは映画に対してじゃなく、原作に対してひとつ異論を唱えさせてもらうならば・・・・・ひとみが持つ感音性難聴という障害、そのために彼女がああまで心を頑なにしてしまうことには、私としては(一応、健常者ではあるが)いまひとつ納得しかねるのだ。ひとみは自分に障害があることに、周囲が思うより以上にこだわり過ぎているんじゃないだろうか?「健常者が上から目線で」という彼女の言葉があったが、それは裏を返せば彼女が常に「健常者を下から目線で」見るあまり、自らが健常者と自分との間に深い溝を作っているだけだと思う。補聴器をしていることは、決して恥ずかしいことじゃない。そして、補聴器をしている≠普通の女の子 なんて考え方自体が、彼女をますます卑屈にしているだけだと思う。あくまでフィクションだから、ひとみが心を閉ざすに至った心情を強調するために、会社の同僚の女性やセクハラオヤジのような極端なキャラクターが彼女の周りには配されているが、現実はそんなに悪い奴ばかりじゃないよ・・・・・多分。