評 価
File No.
2655
製作年 / 公開日
2017年 / 2017年09月09日
製 作 国
日 本
監 督
是枝 裕和
上 映 時 間
125分
公開時コピー
犯人は捕まった。真実は逃げつづけた。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
福山 雅治
[as 重盛朋章]
広瀬 すず
[as 山中咲江]
満島 真之介
[as 川島輝]
市川 実日子
[as 篠原一葵]
松岡 依都美
[as 服部亜紀子]
蒔田 彩珠
[as 重盛結花]
井上 肇
[as 小野稔亮]
橋爪 功
[as 重盛彰久]
斉藤 由貴
[as 山中美津江]
吉田 鋼太郎
[as 摂津大輔]
役所 広司
[as 三隅高司]
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あ ら す じ
勝利にこだわる弁護士・
重盛朋章
は、同僚の弁護士・
摂津大輔
から30年前にも殺人の前科がある
三隅高司
の強盗殺人事件の弁護を引き継ぐことになる。解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴された三隅は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない状況だった。
重盛は、どうにか無期懲役に持ち込もうと調査を開始する。三隅は会う度に供述を変え、動機が希薄なことに重盛は違和感を覚える。やがて重盛が三隅と被害者の娘・
山中咲江
の接点にたどりつくと、それまでと異なる事実が浮かび上がっていく・・・・・。
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たぴおか的コメント
良く言えば意味深長な、悪く言えば中途半端で、スッキリしない後味が残る作品だった。一言言わせてもらうならば、これからこの作品を観る方は、決して明快な回答など求めちゃいけない。例えるならば、濃い霧の中をさまよい歩き、よいうやく朧気ながらにも答えらしき姿が浮かび上がってくる。だが、それが唯一無二の正解なのかを答え合わせする術はなく、それが正解なのかどうかの判断はすべて観る側に委ねられているのだ。
明快な判断の妨げになっている最たる要因は、役所広司演じる殺人犯・三隅高司の言動にある。なぜ、彼は減刑を希望して弁護を依頼したのか?その後の彼の言動から察するに、決して減刑などを求めてはいないとしか考えられない。それどころか、進んで罪を犯したことに対する処罰を望んでいるとすら受け取れる。さらに言うならば、生きることに対しての未練や執着など微塵も持っていないとさえ思える。そして、弁護の過程で重盛が三隅の真の動機にたどり着く懸念は多分にあったわけで、そうなることを三隅が望んでいないことだけは明らかだから。そのくせ「本当の理由には興味ないかな、重盛さんには?」などと思わせぶりな台詞を吐くなど、三隅の言動が首尾一貫していないのが大いに気になる。
そもそもタイトルは『三度目の殺人』だが、劇中で殺人は二度しか行われていないのも明快な理解への妨げになっている。もう一つの殺人が一体何を指すのか?それによって解釈は大きく変わってきそうだ。
これはあくまで個人的な解釈なのだが・・・・・一度目の殺人には疑いを差し挟む余地はない。が、二度目の殺人では、確かに実行犯は三隅かもしれないが、彼は共謀共同正犯もしくは従犯に過ぎなくて、主犯は広瀬すず演じる被害者の娘・咲江ではないのだろうか。そう解釈すれば、被害者を河原に簡単に呼び出せたのにも納得できるし、玄関にあった咲江の靴に付着した泥も説明できる。そして、三隅と咲江が共に真実を隠匿することによって三隅がすべての罪を負って死刑となる、これが三度目の殺人ではないのだろうか?と。ところが一方では、三隅が減刑を望んで弁護を依頼したという事実が大きな矛盾として立ちはだかってくるわけで、あちらを立てればこちらが立たず、そんな堂々巡りを私は強いられているのだ。
そんな微妙なバランスを保って成り立っているような作品だけに、キャストの拙い演技一つでぶち壊しにもなりかねない。だが、役所広司は考え得るキャスティングの中でも最も適役な俳優の一人。被害者の妻・美津江を演じた斉藤由貴の演技は言うに及ばず、若手女優の中でも頭一つ抜け出した感がある広瀬すずの演技力も間違いなく本物だ。そんな芸達者を揃えたキャスト陣に囲まれた福山雅治も、彼らに見劣りすることない熱演を披露してくれていて、福山主演作の中ではこれが最高傑作だと言えるだろう。