評     価  

 
       
File No. 2809  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2018年06月16日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   加門 幾生  
       
上 映 時 間   111分  
       
公開時コピー   大切な人のために流す涙は、この世で一番あたたかい涙かもしれない  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   滝川 広志 [as 水島正二]
柾木 玲弥 [as 高梨歩]
原田 佳奈 [as 水島直子]
高林 由紀子 [as 松波千代子]
大和田 紗希 [as 沢田朋子]
島 かおり [as 佐倉琴子]
三谷 悦代 [as 柴山はつ子]
小林 博 [as 篠原幸一]
前田 けゑ [as 浅羽道徳]
勝部 演之 [as 松波平二郎]
 
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あ ら す じ    葬儀社の営業部長水島正二はある日、社長の松波平二郎から新人を1名採用するように命じられる。数名の応募者の中から水島は、第一印象で即・不採用と考えていた、茶髪にピアスで面接にやって来た若者・高梨を、周囲の反対を押し切って採用する。
 水島の見込んだとおり、一見軽薄に見える高梨は、遺族の心にきちんと寄り添える優しい若者だった。そんな高梨との出会いをきっかけに、それまで悲しみの心を押し殺してきた水島にも少しずつ変化が生じていくのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    コロッケが滝川広志の本名で臨んだ映画初主演作だが、舞台が葬儀屋ということもあって、今ひとつ鑑賞意欲が湧いてこない作品だった。けれども、私が最も利用する劇場であるTOHOシネマズ八千代緑が丘がある八千代市で撮影され、そのためにTOHOシネマズ八千代緑が丘で舞台挨拶付きの先行上映が行われることを知り、一転して興味が湧いてきた。もっとも、舞台挨拶付き先行上映は平日の昼間に行われたために、仕事を休んでまで観るわけにはいかなかったのが悔やまれる。おそらく、いくらサービス精神が旺盛なコロッケといえども、初主演作の舞台挨拶でものまねを披露するなんていうことはしなかっただろう、と自分に言い聞かせて(笑)。
 気にしていなかったが、この作品が上映されるのは、TOHOシネマズでは全国でも八千代緑が丘の1館のみ。もしも八千代緑が丘で上映がなければ、わざわざ遠方へ脚を伸ばしてまで観ようとは思わなかっただろうことを考えると、まさに“瓢箪から駒”的な秀作だったと言える。
 時期をほぼ同じくして、是枝監督のパルムドール受賞作『万引き家族』が公開されているために、世間の注目が一斉に『万引き家族』に向けられてしまっているのが残念でならない。裏では、この作品のように滅多にお目にかかれない、是非老若男女を問わず多くの人に観てもらいたい秀作がひっそり公開されているんだから。とにかく、今までこれほど泣かされた作品はないし、掲示板を見ても「泣ける」という単語が必ず使われていると言っていいほど、泣ける作品であることは請け合いだ。同じ葬式ネタの作品では、2008年の『おくりびと』がオスカーを受賞しているが、個人的にはこの『ゆずりは』の方が文句なく好きだ。コメディ・タッチの『おくりびと』に対して、笑いを誘うようなシーンもないあくまでも正攻法で作られた『ゆずりは』は、下手な小細工をせず淡々と描かれていて実に潔い。
 水島の妻・直子を演じた原田佳奈の美しさが目を惹き、コロッケ演じる正二とは夫婦というより親子じゃないの?と思ってしまったが、調べてみたらてっきり20代だと思い込んでいた彼女の実年齢が36歳というのには驚かされた。また、久しぶりにお目にかかった島かおり、いい年齢の重ね方をされたようで、70歳を越えた今でも相変わらず品のある美しさを保ってらっしゃる。
 新人の高梨を演じた柾木玲弥の演技もまた素晴らしい。最初はナゼ彼のような今風の軽いノリの青年が葬儀社に?なんて思ったが、水島の厳しい指導にもめげずに成長していく様は、まるで自分が彼の父親になったような錯覚を覚えた。ラスト近くで明かされる前記「ナゼ?」の真相には、「なるほど、そうだったのかぁ」と納得させられる。