評     価  

 
       
File No. 2840  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2018年06月23日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   上田 慎一郎  
       
上 映 時 間   96分  
       
公開時コピー   最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   濱津 隆之 [as 日暮隆之]
真魚 [as 日暮真央]
しゅはま はるみ [as 日暮晴美]
長屋 和彰 [as 神谷和明]
細井 学 [as 細田学]
市原 洋 [as 山ノ内洋]
山崎 俊太郎 [as 山越俊助]
大沢 真一郎 [as 古沢真一郎]
竹原 芳子 [as 笹原芳子]
吉田 美紀 [as 吉野美紀]
合田 純奈 [as 栗原綾奈]
浅森 咲希奈 [as 松浦早希]
秋山 ゆずき [as 松本逢花]
山口 友和 [as 谷口智和]
藤村 拓矢 [as 藤丸拓哉]
イワゴウ サトシ [as 黒岡大吾]
高橋 恭子 [as 相田舞]
生見 司織 [as 温水栞]
 
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あ ら す じ    とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さず、テイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!?「カメラは絶対に止めない!」と言いながら、本物のゾンビに大喜びで撮影を続ける監督。一方のスタッフやキャストたちは、次々とゾンビ化していく・・・・・というテレビドラマ作品『ONE CUT OF THE DEAD』を撮影することになり・・・・・。  
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たぴおか的コメント    恥ずかしながらこの映画の存在は知っていたが、6月の公開にもかかわらず8月まで全く眼中になかった。その後、“37分のカメラワンカット長回し”や“無名の俳優たちが演じる超低予算作品”“都内わずか2館からスタートし口コミで全国展開”“新宿K's cinemaでは公開以来上映回72回連続満席”なんて話を知り、これはもう観るしかないと、地元のTOHOシネマズでの上映も始まったために、遅まきながら劇場へ。
 まずは、“無名の俳優陣”というが、全員が演技のド素人ってわけじゃなくて、それなりに俳優を生業にしている面々なのだが、中でも日暮監督の妻・晴美を演じたしゅはまはるみのブチ切れた演技が見事。あの「ポン!」ってかけ声が、夢に出てきそう(笑)。また、個人的には松本逢花役の秋山ゆずきの健康美あふれる色っぽさが気に入った。余談だが、一応ホラーにも属する作品なので作品中で何がコワかったかと言うと、女性プロデューサー笹原芳子を演じた竹原芳子の顔が、私にとっては最高にコワかった、ホントに(笑)。
 こういうケースは得てして期待しすぎて肩透かしを食うことが少なくないが、この作品に関しては予想以上の面白さ。ただ、その面白さを説明しようとすると、何を書いてもネタバレになってしまいそうだ。ただひとつ、これから観る方にアドバイスをするならば、「前半のワンカット映像で不自然なリアクションや間があるのを見逃さないこと」ってくらいだろうか。とにかく前半であちこちに仕掛けられた伏線が、後半では面白いくらいに巧みに回収されていく、その手法の鮮やかさは特筆すべきだ。というわけで、以下は例によって一見では読めないようにしておくので、知りたい方は自己責任で空白部分をドラッグするか、「Ctrl」+「A」を押して見てください。この作品に限っては、これから観ようと思っている方は絶対に読まないように。
 コピーにも“この映画は二度はじまる”とあるように2部構成となっていて、まずは唯一の予備知識“37分の長回しワンカット映像”である『ONE CUT OF THE DEAD』に臨むわけだが、最初は「やっぱりB級の低予算作品だけあって、突っ込み所満載だなぁ」と正直落胆させられた。ところが、後半を観るとその感想は完全な間違いであることを思い知らされる。
 上にも書いた通り、前半の『ONE CUT OF THE DEAD』には、あまりに不自然な間やリアクション、あるいは意味不明な言動が多い。頭をかち割られて死んだはずの日暮春海が立ち上がって「何、あれ?」と言うシーンなどはその最たるもので、他にも小屋の中でうずくまった松本逢花の目の前にゾンビものらしき脚だけが映されて、その後何事もなく引き返していくシーンなど、枚挙に暇がない。それらに対して、後半が実は“種明かし映像”とも言うべき内容になっていて、前半で随所に見られた無理のある展開や不要な間、意味不明なキャストの言動などが実はすべて緻密に計算し尽くされたものであることが次々と明かされていくのだ。撮影しているのがホラー作品だけに、その裏舞台で繰り広げられる苦し紛れのスタッフの滑稽さが余計に際立つのだ。

 お陰様で、先日の『ゆずりは』では思い切り泣かされたのに対して、今回は思い切り笑わせてもらった。折も折、盗作疑惑が持ち上がっているが、そんな重箱の隅をつつくような盗作の言いがかり(だと私は思っている)など気にせずに、是非一度劇場でこの作品を満喫してもらいたいと思う。