評     価  

 
       
File No. 2873  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2018年10月12日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   三木 聡  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   この声に、世界がヤラれるっ!!  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   阿部 サダヲ [as シン]
吉岡 里帆 [as 明日葉ふうか]
千葉 雄大 [as 坂口]
麻生 久美子 [as 女医]
小峠 英二 [as 自滅]
片山 友希 [as 伊能聖子]
中村 優子 [as 木之本]
池津 祥子 [as シンの母親]
森下 能幸 [as よろこびソバのおじさん/ピザの配達員]
岩松 了 [as 無料レコード社長]
ふせ えり [as デビルおばさん]
田中 哲司 [as 社長]
松尾 スズキ [as ザッパおじさん]
 
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あ ら す じ    驚異の歌声をもつ世界的ロックスターのシン。その存在がカリスマであり、熱狂的な人気を誇っているが、実はこれには決して人に知られてはいけない秘密があった。それはいわば声帯ドーピング、韓国でのアンダーグラウンドの整形手術で人工的に喉を強めて常人では出すことができない声を発し続けていたのだった。
 そんなシンの喉も限界に達しつつあり、ある夜の事務所社長が止めるにもかかわらず行ったライブで、大量に吐血してしまう。喉がボロボロにもかかわらず、ライブのテンションから暴走気味にライブハウスを飛び出したシンは、声が小さすぎてバンドが解散したストリートミュージシャンの明日葉ふうかに出会う。
 何事にも自信がもてなくて、それが異様に小さすぎる声に繋がっているふうか。そんな彼女の眼の前に何度も現れては、シンは彼女を振り回す。シンは「心が燃えない、心の不燃ごみ」「音量上げろタコ!なに歌ってんのかわかんねんだよ!」とふうかに罵声を浴びせる。強引なパワーのシンに圧倒されるふうかは、何とか反抗しようとするが、ひょんなことからシンの声帯ドーピングの秘密を知ってしまう。
 シンを何とか韓国に連れ出して喉を治そうというふうかと、逆に声帯の限界に達する前に、もう一度歌わせようとする人間たちの声のリミットを巡る追いかけっこが始まる。何とか、追跡の手から逃れたシンとふうかは釜山へ向かう。そして、かつてふうかが暮らした花火工場が追跡劇の最後の場となり、現地の警察を交えた大混乱の中、ふうかは大声で叫び、シンは警察に捕まってしまうのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    阿部サダヲ主演の作品だけにちょっと期待していたのだが、そのちょっとの期待を大きく裏切るような体たらくには唖然。笑えないし、もちろん面白くなんて全然ない。吉岡里帆は全く可愛いとは思えなければ魅力も感じなくて、もしも他の女優が演じていれば、作品の印象も大きく変わっていたのかもしれないと思う。私が望んだ初日のレイトショーは客の入りもロコツにがら空きで、案の定週末の観客動員ランキングではベスト10にすら入れない大コケ状態なのも、当然と言えば当然の結果だろう。
 そもそも、この作品を“コメディ”という枠にはめてしまうこと自体に無理がある。前半こそコミカルシーンもあったものの、後半は笑いの要素など微塵もなく消し飛んでしまっている。それどころか、妙な寂しさや侘しさといった笑いとは対極的な感情に支配されてしまい、特に韓国に渡ってからの展開は、違う作品になったんじゃないかと思うほどの急展開で、しかも後味が悪いのなんのって・・・・・。
 キャストも豪華な割には、個々のキャラクターがてんでバラバラに演技をしているような、調和という言葉とは無縁な状態に見えてしまうのも、ハッキリ言ってダメダメだろう。個人的には、麻生久美子があんな役柄を演じているのには意表を突かれ新鮮だったが、それ以外は「面白いキャラを作ろう」とする意識ばかりが先走っている感があって、残念ながら空振りに終わっているとしか思えない。
 私は基本的に、阿部サダヲはコメディ作品には向いていない役者だと思っていたが、この作品でそのことを確信できた気がする。彼はむしろホロッとさせるような人情物とかに向いていて、その手の作品の中で小ネタを使って笑いの緩和を与えるのが上手いと思う。だから、今まで『舞妓Haaaan!!!』や『謝罪の神様』といった作品でも、ほとんど笑えた記憶がないのだ。味のある役者だけに、彼の個性を存分に引き出せるような作品と演出を期待したい。