評     価  

 
       
File No. 2892  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2018年11月16日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   きうち かずひろ  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   七歳の少女の相棒(パートナー)は
元ヤクザの男。     
 

職業、探偵。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   遠藤 憲一 [as 矢能政男]
岩井 拳士朗 [as 池上数馬]
白鳥 玉季 [as 黒木栞]
小宮 有紗 [as 北川理恵]
中西 学
酒井 伸泰
安藤 一人
渡部 龍平
渋川 清彦
成瀬 正孝 [as 堂島哲士]
阿部 進之介 [as 安田義行]
竹中 直人 [as 情報屋]
高畑 淳子 [as 婆さん]
要 潤 [as 鶴丸清彦]
 
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あ ら す じ    日本最大の暴力団・菱口組最高幹部の側近だった矢能政男は、ヤクザ稼業から足を洗い、訳アリで預かることになった小学2年生の少女・黒木栞と2人で探偵事務所を営んでいる。ある日、そんな矢能の元に「取引」の現場に立ち会って欲しい、という依頼が入る。だが、指定された場所に足を運ぶと、依頼人は拳銃で撃たれた死体となっていた。虚をつかれた矢能は、マスクを被った男に銃口を向けられていた。その男は、矢能にその拳銃を握らせ、「証拠である凶器の拳銃に、あんたの指紋だけがついてる。これって致命的なことじゃないかな」そう言い残すと、矢能と死体を置き去りにして去って行った。
 依頼人の死体を調べると、パスポートが出てきた。名前は安田義行。だが、矢能が安田の姉に電話をかけると、目の前で死んでいる安田は3年前にカンボジアで死んだという。長年、悪党ばかりを見てきた矢能は、安田が強請りに手を染めており、“取引”の相手に口封じのために殺されたのだと見当をつける。矢能は馴染みの情報屋に、3年前に死んだことになっている安田の情報集めを頼むが、情報屋は、矢能がヤバい案件に首を突っ込むと、栞に危険が及ぶと心配する。だが、矢能も若僧にナメられたままというのが気に食わなかった。
 矢能は安田の通話履歴から、国会議員の鶴丸清彦に辿り着き、また情報屋から堂島哲士の名前を入手する。堂島は、二世議員の鶴丸の父親の代から裏のトラブルを一手に引き受けていた人物で、空手道場を営む武道家だった。早速、堂島の道場に足を運んだ矢能は、そこで自分に銃を突きつけた男、池上数馬と遭遇する。
 自分は完璧に仕事をこなしたと信じていた数馬は、思いがけない矢能の登場に動揺し逆上するが、矢能はすでに数馬を相手にしていなかった。安田殺しの構図は、安田が鶴丸を強請り、鶴丸に泣きつかれた堂島が数馬に手を汚させたのだと、矢能は確信していた。しかし、師匠の前で矢能に軽くあしらわれ、恥をかかされた数馬は矢能をつけ狙い始める。そして数馬は矢能にとっての一線を越えた。栞を誘拐したのだ。矢能は栞を救うため、数馬の元に車を飛ばす・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    コワモテな名脇役・エンケンさんこと遠藤憲一の、少なくとも私は初めて観る主演作。元ヤクザの探偵・矢能という設定がピッタリハマっていて、肝の据わった警察とのやり取りなどは、笑っちゃうほど板に付いていて、これが演技であることを完全に忘れさせてくれていた。矢能は日本で五本の指に入るコワ〜イ男らしいけど、そんな彼のアウトロー振りが見事に堂に入っていて、それでいて威嚇のために数馬を銃で撃って軽い怪我をさせたくらいで、後は法に触れることなく事件を解決(と言ったら語弊があるけど)してしまうので、この手の作品にありがちな残虐なシーンもなく、実にスマートにまとめ上げられているので、幅広い観客層に受けそうな作品だ。
 無駄なシーンがなく、簡潔ににそれでいて全てを網羅しながら綺麗にまとめ上げた脚本が秀逸。特に、ラストへ向けて難事が次々と矢能に降りかかってくるのだが、それらをまとめて一つの結末へ持って行くストーリーの運びは、観ていて非常に楽しい。まぁ、いくら顔中に包帯を巻いていたとしても、他人のパスポートで国外に出られるのか、また、中西学演じる刑事の小林の窃盗罪を、あんなに単純に他人に着せられるのか、は疑問だけど、野暮なツッコミは止めて単純に成り行きを楽しめばいいだろう。
 冒頭でいきなり竹中直人が登場したときには、またいつもの調子のオーバーアクトで白けさせてくれるんじゃないかと気が気じゃなかったが、この作品ではその意図をぶち壊すことなく、非常に自然に振る舞ってくれていたので、それ以降は安心して観ることが出来た。なんだぁ、竹中直人もやればできるじゃないか、とちょっと見直した(笑)。そして、今までのどこか頼りないが、比較的善良なキャラを演じる傾向が強かった要潤が、それまでのスタイルから脱皮して、『スマホを落としただけなのに』に引き続き汚れ役で登場している。違和感なくキャラクターになりきっていたがために、こういう路線が今後の彼に定着してしまわないかと、好きな俳優だけに少々心配になった。
 そして、この作品の最大の目玉で、作品全体に一抹の清涼剤の役割を果たしてくれていたのが、言うまでもない栞を演じた白鳥玉季チャンだ。普段は言葉遣いが常に丁寧語ですました表情でいて、笑うとえくぼが印象的な嫌みの無い可愛らしさだし、矢能に抱きついて泣きじゃくるシーンは彼女の本質を見せられたようで、矢能のような男でさえも保護本能に駆られて栞を大切に想わずにはいられない、そんな気持ちがよくわかる。この矢能と栞の凸凹コンビが絶妙なマッチングで、この2人の活躍する続編を観たくなる。ただ、無理矢理続編を制作して、この作品を損ねてしまうようだったら、これはこれで完結って事でいいと思うけど。