評     価  

 
       
File No. 2926  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年01月11日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐々部 清  
       
上 映 時 間   105分  
       
公開時コピー   そうか、トンデモない人だったんだなぁ!
    
<北原白秋><山田耕筰>今、この二人が生きていたらどんな唄をつくるのだろう
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   大森 南朋 [as 北原白秋]
AKIRA [as 山田耕筰]
貫地谷 しほり [as 菊子]
松本 若菜 [as 松下俊子]
小島 藤子 [as 記者]
由紀 さおり
安田 祥子
津田 寛治 [as 菊池寛]
升 毅 [as 秦彦三郎]
稲葉 友 [as 室生犀星]
伊嵜 充則 [as 高村光太郎]
佐々木 一平 [as 萩原朔太郎]
近藤 フク [as 石川啄木]
松本 卓也 [as 大手拓次]
柳沢 慎吾 [as 鈴木三重吉]
羽田 美智子 [as 与謝野晶子]
松重 豊 [as 与謝野鉄幹]
 
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あ ら す じ    昭和27年。神奈川県小田原市で「北原白秋 没後十周年記念コンサート」が開かれ、北原白秋が作詩した童謡「この道」が、少女合唱隊とオーケストラによって演奏される。指揮をするのは、この曲を作曲した山田耕筰。コンサート終了後、若い女性記者から白秋がどんな人物だったのか尋ねられ、耕筰は二人の出会いと交流を回想する。
 明治43年初夏。詩人の北原白秋は、隣家の人妻である松下俊子に夢中になっている。与謝野晶子から諭されても、「かわいそうな女の人が隣にいたら、放っておくわけにいかないでしょう?」と開き直る始末だ。その翌年、「邪宗門」に続く白秋の第二詩集「思ひ出」の出版記念会が盛大に開催され、与謝野鉄幹高村光太郎萩原朔太郎らに祝福される白秋。郷愁に満ちた作風が高く評価され、一躍人気詩人となった白秋は得意の絶頂にいた。だが、大正元年(1912年)夏、白秋は俊子の夫から姦通罪で告訴され、逮捕されてしまう。このスキャンダルで白秋の名声は一気に墜ちてしまった。
 大正7年(1918年)に鈴木三重吉が「赤い鳥」を創刊。白秋はこの児童文芸誌を舞台にさまざまな童謡を発表し、新境地を切り開いた。その三重吉の仲介で山田耕筰と出会った白秋は、一度はけんか別れしたが、大正12年(1923年)の関東大震災後、「僕の音楽と君の詩とで、傷ついた人々の心を癒やす歌がきっとできるはずだ」という耕筰の言葉で、二人は意気投合する。
 大正14年(1925年)、日本初のラジオ放送で、白秋作詩、耕筰作曲の「からたちの花」が演奏された。「からたちの花」に続いて発表された「この道」も大評判となり、白秋、耕筰コンビの人気はますます高まるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    主演が大森南朋と地味な上に、あろうことか山田耕筰を演じるのがAKIRAとあって、元々劇場で観る気は全くなかったのだが、幸か不幸か時間に余裕ができてしまい、しかもTOHOシネマズの1ヶ月フリーパスの期間内だったこともあって、やむなく(?)劇場で観てしまった。ちなみに、私の高校の校歌も山田耕筰の手になるものだが、作詞はサトウ・ハチロー。北原白秋の劇中の言葉を借りれば、山田耕筰が“浮気した”作品ってことになる。
 AKIRAに対して文句を言いたいのは山々だがひとつだけ言わせてもらうと、劇中でのバイオリン演奏、もう少し何とかならなかったのだろうか?あれじゃ、小学校の学芸会以下のレベルだろう。演奏しているメロディと弓運びがまったく合っていないだけじゃ物足りないとばかりに、左手の弦を押さえる指の動きさえ曲に全く合っていないのには、唖然とするほかない。下手でもいいから本当にバイオリンが弾ける俳優をキャスティングするか、あるいはせめてその部分だけでも吹替を使うとかできなかったのだろうか。そう言えば、冒頭のコーラスでも、AKIRA扮する耕筰の指揮と歌が合っていないように思えたのは気のせいだろうか。
 一方の白秋だが、大森南朋演じる北原白秋のキャラが、あまりに軽薄すぎるのには驚いた。もしかして、私が今まで抱いてきた白秋に対して抱いていた、山田耕筰とのコンビで数多くの名曲を生んできた重厚な人物というイメージはあくまで偶像であって、実際の白秋像がこの作品の通りだとしたら・・・・・とにかく、これまでの白秋像が完全に瓦解してしまったのだけは確かだ。だが、そんな白秋を取り巻く人脈はもの凄い。菊池寛、室生犀星、高村光太郎、萩原朔太郎、石川啄木、鈴木三重吉、与謝野晶子、与謝野鉄幹と文壇に名だたる面々が取り巻いているところを見ると、どうやら性格はともかくとして人望は厚かったようだ。
 これほど多くの人の心にしみる曲を生み出した2人の物語なのに、映画自体は心に響くような感動もなく、2人の友情の深さも感じられなかった。もしも脚本が感動的だったとしても、その感動をAKIRAの演技がことごとく粉砕してくれるという畏れがあっただけに、逆にこれで良かったのだと思えなくもないが。