評     価  

 
       
File No. 2935  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年02月01日  
       
製  作  国   韓  国  
       
監      督   イ・チャンドン  
       
上 映 時 間   148分  
       
公開時コピー   彼女は一体、なぜ消えたのか?
    
待ち受ける衝撃のラストは、
想像を絶する
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ユ・アイン [as イ・ジョンス]
スティーヴン・ユァン [as ベン]
チョン・ジョンソ [as シン・ヘミ]
 
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あ ら す じ    運送会社のアルバイトをしているイ・ジョンスは、デパートの店頭でセールスの広告モデルを務める女性に呼び止められる。彼女は、すっかり美しくなった幼なじみのシン・ヘミだった。思わぬ再会を果たした2人は、互いのことを語り合い一気に距離を縮めるのだった。
 ジョンスは小説家を志しながら、アルバイト生活を続けていた。一方のヘミは、最近パントマイムを倣っているという。また、アフリカ旅行をするためにお金を貯めているらしかった。そして、ヘミがついにアフリカ旅行に出かけることになると、彼女はジョンスに留守の間猫“ボイラー”の世話を依頼してくる。以来、ヘミが帰国するまでの間、ジョンスは彼女の部屋に通いボイラーに餌をやることを繰り返すが、実際にその姿を見ることはなかった。
 半年して、ようやくヘミから帰国するとの連絡が入る。ジョンスが空港へ迎えに行くと、ヘミはナイロビ空港で知り合ったという、見知らぬ男性ベンと一緒だった。ベンはジョンスとは桁違いの裕福な生活を送っていて、ヘミはどんどんベンにのめり込んでいくかのように見え、ジョンスはそんなヘミを戸惑いながらもただ見守るしかなかった。
 ある日、ジョンスの家にベンとヘミが訪れる。3人は庭先のテーブルでワインをあけ、大麻にふけり、退廃的だが甘美な時間を送る。そして、ヘミが寝てしまったところで、ベンはジョンスに自らの“趣味”を打ち明ける。それは、古いビニールハウスを選んで火をつけることだった。犯罪ではないかと問いかけるジョンスに対し、ベンは悪びれたところもなく肯定したうえで、「警察には捕まらない。韓国にはビニールハウスが多すぎるから」と意味深長な言葉を返すんだった。
 そして、その日以来ヘミの姿が消えてしまう。電話にも出ないし、マンションを訪ねても室内は以前と打って変わって整頓されていて、生活感を感じさせなかった。ジョンスは不審に思いベンを訪ねるものの、ベンもヘミの姿を見ないと言い、彼の傍らには新しい彼女と思われる女性がいた。ヘミは一体どこに消えたのだろうか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    村上春樹の『納屋を焼く』を映画化した作品で、これ見よがしに『劇場版』とあるのは、短編のドラマで既に映像化されているためとか。原作の小説も未読であればドラマも観ていない、予備知識ゼロの状態で臨んだのだが・・・・・とにかく「長い」というのが正直な感想だ。ただ、途中で眠気を催すようなダラダラした展開ではなかったのが幸いだったけど。
 コピーには「想像を絶する衝撃のラスト」とあるが、結構早い段階でベンが趣味だという“ビニールハウスを燃やす”のビニールハウスが比喩であり、実は何を指しているかが想像ついてしまったから、ラストもおそらくああなるだろうという気はしていた。ただ、必ずしも私の解釈が正解だという保証はなく、ヘミがどこへ消えたのか?という問いに対しては違った回答ができるような、そんな余地が充分に残されている・。これは、「どのように解釈するかはすべて観客に委ねてある」という、表面上は解釈の自由度の高い作品なのだが、それは裏を返せば、監督が観る者に「こう解釈して欲しい」と胸を張って主張できない、ある意味極めて“ズルい作品”だと言える。
 ラストのクライマックスへ向かうべく、様々な伏線が張り巡らされている。例えば、ジョンスがデパートのクジ引きに当たって手に入れた、女性物の腕時計とか(余談だが、とても“高級”と呼べるような腕時計とは思えないが)。その中には、どうしても理解できない、意味がわからない布石も少なくない。ジョンスの実家にかかってくる無言電話は、一体誰が何の目的でかけているのか。ヘミの部屋で、ジョンスはなぜ猫のボイラーを一度も見かけていないのか。ヘミが昔住んでいた辺りに、井戸は本当にあったのか、それとも実はなかったのか。そして、井戸の存在の曖昧さをもってして、観る者にどうして欲しかったのか。観終えた後で決してスッキリすることができない、モヤモヤ感が尾を引く作品だ。