評     価  

 
       
File No. 2938  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年02月01日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   福澤 克雄  
       
上 映 時 間   119分  
       
公開時コピー   正義を、語れ。  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   野村 萬斎 [as 東京建電・営業一課係長 八角民夫]
香川 照之 [as 東京建電・営業部長 北川誠]
及川 光博 [as 東京建電・営業二課長 原島万二]
片岡 愛之助 [as 東京建電・営業一課長 坂戸宣彦]
音尾 琢真 [as ねじ六・社長 三沢逸郎]
藤森 慎吾 [as 東京建電・経理部課長代理 新田雄介]
朝倉 あき [as 東京建電・営業一課 浜本優衣]
岡田 浩暉 [as 東京建電・カスタマー室長 佐野健一郎]
木下 ほうか [as ゼノックス・副社長 田部]
吉田 羊 [as 淑子]
土屋 太鳳 [as 三沢奈々子]
小泉 孝太郎 [as 東京建電・商品開発部 奈倉翔平]
溝端 淳平 [as 星野]
春風亭 昇太 [as 東京建電・経理部長 飯山孝実]
立川 談春 [as トーメイテック・社長 江木恒彦]
勝村 政信 [as 東京建電・経理部課長 加茂田久司]
世良 公則 [as 東京建電・副社長 村西京助]
鹿賀 丈史 [as ゼノックス・常務 梨田元就]
橋爪 功 [as 東京建電・社長 宮野和広]
役所 広司
北大路 欣也 [as ゼノックス・社長・徳山郁夫]
 
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あ ら す じ    都内にある中堅電機メーカーの東京建電。定例の営業会議では、営業部長・北川誠の激しい檄が飛び、目標を達成できなかった営業二課長・原島万二に対しての厳しい叱責に、誰もが震え上がっていた。そんな中、のんきにイビキをかいていたのは、営業一課の万年係長・八角民夫だった。ある日八角は、有給休暇の申請を巡って、年下のエリート課長・坂戸宣彦をパワハラで社内委員会に訴える。すると、大方の予想を裏切って委員会が下した裁定は、坂戸の左遷という厳しいものだった。
 北川の信頼も厚いエリートへの思いがけない処分に、社員たちの間に動揺が拡がる中、万年二番手に甘んじてきた原島が後任の営業一課長に任命される。会社の“顔”である一課に異動してはみたものの、思うように成績を上げられず場違いにすら感じていた原島だったが、グータラ社員の八角ではなく坂戸が一方的に責めを負わされた人事に不信感を抱く。さらには、坂戸が左遷された直後にネジ製造の下請け会社が、坂戸が契約したトーメイテックからそれ以前に取引していたねじ六に急遽変更されており、その担当が八角だったことにさらに疑念を強めた原島は、寿退職間近の女子社員・浜本優衣と共に、一連の不可解な人事の裏に何があったのか、真相を探り始める。
 当初は八角と下請け業者の癒着を疑っていた原島と浜本だったが、調べを進めるうちにある大きな疑惑に辿り着く。それは、東京建電が使用しているネジの強度不足と、それを知りながら北川が隠蔽しようとしているのではないかというものだった。そして、これ以上深入りしないよう忠告する八角から、2人は想像を絶する規模の不正が行われた事実を告げられるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    これは抜群に面白い!こういう作品を観てしまうと、先日の東野圭吾原作の『マスカレード・ホテル』などは児戯に等しいとさえ思えてしまう。特に、自分がサラリーマンだというのもあるだろうが、共感・共鳴できる部分や、逆に「自分だったらこうはしないだろう」と常に自分を劇中の人物に置き換えて観ることができるので、そのリアルさは半端じゃない。
 エンディングで八角が役所広司演じる国交省の役人へに語る「不正はなくならない。絶対に」という言葉が、妙に胸に突き刺さった。政府が掲げる旗印の下、「働き方改革」が行われようとしている現在、不正の行われる土壌はまさに飽和状態にあるのではないか。アベノミクスによって景気は上向きにあると報道されているものの、その実大半の労働者は私も含めて日本経済が好転しているなど到底実感することはできない。そこへもってきて、東京建電じゃないがさらに売上を伸ばせという至上命令のもと、達成すればするほど自らの首を絞めるような、無限のノルマ地獄だけが雪上を転がる雪玉のようにますます大きくなっていく。そんな状況の中で生きていくサラリーマンとは、何と悲しい生き物なのだろうとつくづく思い知らされた。
 事の発端はエリート営業課長(片岡愛之助)に対するパワハラの処分で、そこから「まだあるんかい?」とばかりに次から次へと芋づる式に真相が明らかにされていく。大企業の闇がいかに根深いかがよくわかる。その闇の探偵役に充てられた及川光博演じる原島万二の、気弱だが自分の成績よりも正しいことを必死で貫こうとする真面目さが光る。相棒役の朝倉あき演じる浜本優衣との相性も絶妙だ。そして何よりも、野村萬斎のグータラ社員ぶりが、いかにも裏に何か抱えていると思わせる曲者ぶりがさすがで、それでいていざというときの恫喝は迫力充分。香川照之演じる北川誠も、てっきり不正の黒幕だと思わせておいて、実は彼も組織の中の悲しい歯車の一つに過ぎなかったという事実。あちこちに見所が満載で、すでに二度観ているが、まだ飽き足らずに劇場で観たいと思わせる作品だ。
 作品によっては無駄遣いと思えるような、豪華キャストそれも主役クラスの役者を惜しみなく注ぎ込んだ配役も素晴らしい。ワンカットしか登場しない土屋太鳳や溝端淳平、小泉孝太郎、いつも観ている顔なのに眼鏡を外したら誰だかわからなかった春風亭昇太、迫力と貫禄満点な御前様の北大路欣也、そしてオフィシャルサイトのキャストにも名前が載っていないが、最後を締めくくってくれる役所広司。キャストだけでも観ていて退屈させられることがない。