評     価  

 
       
File No. 2950  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年02月22日  
       
製  作  国   デンマーク  
       
監      督   グスタフ・モーラー  
       
上 映 時 間   88分  
       
公開時コピー   事件解決のカギは電話の声だけ。
88分、試されるのはあなたの<想像力>
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ヤコブ・セーダーグレン [as アスガー・ホルム]
イェシカ・ディナウエ [as イーベン]
ヨハン・オルセン [as ミケル]
オマール・シャガウィー [as ラシッド]
カティンカ・エヴァース=ヤーンセン [as マチルド]
 
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あ ら す じ    警察官だったが過去の事件をきっかけに緊急通報指令室のオペレーターに甘んじていたアスガー・ホルムは、ある日怯えた声の女性から一本の通報を受ける。通報はイーベンという名前の女性からで、アスガーは彼女との噛み合わない会話を不思議に思い、近くにいるであろう男の存在に誘拐を察してイエスかノーで答える質問を繰り返し、子供を自宅へ残したまま白いバンで連れ去られたことを突き止める。そして、すぐさま通信司令室へ連絡し、電話基地局から割り出されたおおよその場所を頼りに近くにいたパトカーを向かわせるよう伝えるのだった。
 本来はここでアスガーの仕事は終わるはずだったが、いてもたってもいられず次はイーベンの自宅へ電話をかけると、電話に出たのはマチルドという6歳の女の子だった。彼女は、パパがママの髪の毛を掴んでナイフを持ったまま出て行ったこと、さらにオリバーという弟がいるが、パパから部屋に入ってはいけないと言われていると話す。アスガーは「ママを助けて」と泣きながら訴えるマチルドに必ず助けることを約束し、オリバーと一緒に待つよう伝え電話を切った。
 アスガーは再び通信司令室へ連絡し、マチルドが残されたイーベン宅へ警察をよこすよう荒々しく伝える。そして、交代時間が来ても帰ることなく、個室の通信室へ移動してイーベンからの連絡を待つアスガー。彼は過去の事件がきっかけで、明日裁判を控えており、妻パトリシアは出て行き、頼みの綱は相棒ラシッドの供述書通りの偽証だった。うまくいけば晴れて現場へ戻れる予定だったのだ。
 そこへイーベンの自宅に着いた警察官からの連絡が入る。マチルドは無事保護することができたとのことだが、弟のオリバーは死んでいるとの報告だった。状況が分からないアスガーは息があるか確認したのか!?と怒鳴るのだが、警官は死んでいるのは一目瞭然で、ナイフで腹を割かれていたと静かに答える。アスガーは乱暴に電話を切ると、ついにイーベンをさらった彼女の夫・ミケルへと電話するのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    どうやら観る前に期待しすぎたせいか、思いのほかアッサリと終わってしまいちょっとガッカリだった作品。アメリカでは911番がそうだが、この作品の製作国であるデンマークでは112番が緊急司令室らしい。日本の110番と違って直接警察には繋がらないというのがミソで、主人公のアスガーも警察との中継役でしかない。そんな彼が、電話から得られる情報だけを頼りに事件を未然に防ごうとするわけだ。本来ならば、警察じゃない緊急司令室が事件を解決したりしちゃいけないわけで、あくまでも極力有用な情報を入手して正確に警察に伝達するのが、彼らの本分なんだけど。
 同様のシチュエーションを描いた作品に、ハル・ベリー主演の『ザ・コール[緊急通報司令室]』があるが、両者の大きな違いは、この作品では一切の状況が白紙から始まっているが、『ザ・コール』では拉致されたアビゲイル・ブレスリン演じる少女に危険が迫っているのは明らかで、さらには少女の危険な現状が観客には明らかにされている点だ。だから、『ザ・コール』の場合は「いかにして少女を助け出すか?」という方向性が既に定まっているが、この作品では「いかにして現状を正確に把握するか?」という前段階からスタートして、その課題がクリアされて初めて「いかにして被害者と思われる女性を救い出すか?」に進めることになる。そして、実はその前段階で既に主人公のアスガーはとんでもない間違いを犯しているのだ。
 わずかな遅れが取り返しのつかない結果をもたらしかねないこういう状況下で人を助けるには、ある程度の見切り発車も必要なことは確かだ。が、繰り返すがアスガーにとって事件解決に向かって行動することは越権行為なのだ。そして、その越権行為の結果、アスガーの早合点で怪我人をだしてしまったものの、イーベンという女性の命を救うことが出来たのも事実だ。が、ちょっと待て。そもそもイーベンの命が危険に晒されたのもアスガーに原因があるわけで、アスガーが何も行動せずににただ淡々と与えられた業務をこなしていれば、誰も傷つかずに終わった事件だよな、これは。とまぁ、ストーリーを分解してしまうと何と他愛のないものなのだが、それを緊迫したドラマにするか、あるいは駄作とするのか、すべてがアスガーに扮するヤコブ・セーダーグレンの演技一つにかかっているのだ。
 警察官だったアスガーが緊急司令室での業務を望んでいたはずもなく、だからそれは彼にとってただルールに従い機械的にこなす仕事でしかなかったはず。そんな越権行為をしてまでイーベンを助けようと彼に思わせた、その理由がわからないのが難点だ。加えて、翌日に警官復帰がかかった裁判を控えていたという状況が、この事件に関与する度合いが、皆無とは言えないまでもきわめて希薄だ。今回の事件のバックボーンとして、もっとアスガーの人となりや、現場の警官から外されたあたりを詳細に描き込んでいれば、もっと深みや重厚さがある作品に仕上がったかもしれない。思いのほか軽いタッチの作品に感じてしまい、緊迫感も物足りなく思えたのがもったいなかった。