評     価  

 
       
File No. 2955  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年03月01日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ピーター・ファレリー  
       
上 映 時 間   130分  
       
公開時コピー   行こうぜ、相棒。
あんたにしか
できないことがある。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ヴィゴ・モーテンセン [as トニー・“リップ”・バレロンガ]
マハーシャラ・アリ [as ドクター・ドナルド・シャーリー]
リンダ・カーデリーニ [as ドロレス・バレロンガ]
セバスティアン・マニスカルコ [as ジョニー・ベネレ]
ディミテル・D・マリノフ [as オレグ]
マイク・ハットン [as ジョージ]
イクバル・テバ
P・J・バーン
トム・ヴァーチュー
ドン・スターク
ランダル・ゴンザレス
 
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あ ら す じ    1962年。ニューヨークのナイトクラブ“コパカバーナ”で用心棒として働くトニー・“リップ”・ガレロンガは、店が改装のためにしばらくの間閉店することになったことから、一時的に無職になってしまう。そしてある日、ぽっかり空いた2か月を、あるドクターの運転手として働かないかと誘われるのだった。
 言われて訪ねた場所はなんとカーネギー・ホールで、その上の階に住むてっきり医者だと思っていたドクター・ドナルド・シャーリーは、トニーが嫌う黒人のピアニストだった。「黒人と働くことに抵抗が?」という質問に、問題ないと答えるトニーだったが、南部、特に人種差別意識の強いディープサウスのツアーに出かけるというドクターの計画を聞き、あまりに無謀だと思い仕事を断ルのだった。
 ところが、事前の調査でトニーは機転が利き腕っぷしが強いこと知っていたドクターは、トニーの言い値の高額な報酬を約束してトニーを雇う。そして、ドクターはトニーに黒人用の旅行ガイドブック『グリーンブック』を手渡す。そこには、黒人が泊まれるホテルやモーテル、立ち寄れるBARやレストランが記されていた。
 こうしてツアーは始まった。彼を招き入れるのは“寛容さをアピールする南部の富裕層”たちで、ドクターには表面的には好意的に接するものの、随所に黒人に対する蔑みが見受けられた。そして、ドクターのピアノの腕と知性溢れる人物に惹かれ始めたトニーには、白人たちのドクターに対する理不尽な対応が我慢できず、次第に怒りを募らせていく。しかし、ドクターはそういう相手にこそ、さらに冷静に対応するべきだとトニーに語るのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    予告編でしつこいくらい「アカデミー賞大本命」なんて言われて、天邪鬼な私はこれまで作品賞受賞作に限って他のノミネート作品よりも面白くなかったということもあって、全く期待せずに「ただただ途中で意識を失わないように」とだけ気合いを入れて臨んだ。そして、嬉しいことに見事に予想が外れた結果となった。
 最初に感じたのは、「ヴィゴ・モーテンセン、役作りのためか思い切り太ったなぁ」ってこと。でも、彼は以前のようなスリム体型よりも太った方が好感度は高いと思うし、いい味が滲み出ている気がする。共演のマハーシャラ・アリは、つい何日か前に『アリータ』でお目にかかったばかりで、『アリータ』では典型的な悪役を演じていたが、この作品ではなかなかいいキャラクターを演じていて、ことらも好感度が一気に上がった。
 時代設定は1960年代なのだが、この時代においてもなおアメリカでは黒人に対する差別があったことには驚かされる。タイトルの“Green Book”とは黒人用の旅行ガイドブックのことらしく、そんな物が存在したこと自体が信じられない。特に南部では、表面上はドクターを手厚くもてなしているように見えても、豪邸内のものではなく庭の片隅に作られた掘っ立て小屋のようなトイレの使用を強いられるなど、黒人差別が根強く残っていることがハッキリと見て取れる。
 そもそもトニーも、それまでは黒人が使用したグラスを捨てたりする黒人蔑視の立場にいた人間なのだが、2人が行動を共にする中で、時には衝突しながらもお互いに歩み寄っていく、そんな心情の変化が上手く描かれているのが、そうなるとは予めわかっていてもなお、心地良く感じられる。
 中でも気に入ったシーンが2つあって、ひとつは南部のツアー中に黒人御用達のBARで、ドクターがセッションを繰り広げるというもの。文字通りのソウル・ミュージックとでも言うべきだろうか、彼が本当は型に填められたクラシックじゃなく、ああいった音楽が心底好きなんだな、と思わせる。そしてもうひとつ、ツアーから戻ってトニーが帰宅する際に、家に寄るように誘われながら一人自分の家に戻ったドクターが、改めてトニーの家のドアを叩くシーン。これには思わず「やったぁ!」と叫びたくなるほどで、絶対にこうならなくちゃいけない。彼を受け入れたトニーの満面の笑みと、彼の妻・ドロレスが心からドクターの来訪を喜び、「手紙をありがとう」と小声で言ったのには、目頭が熱くなりながらも笑ってしまった。