評     価  

 
       
File No. 2996  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年05月10日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   水谷 豊  
       
上 映 時 間   127分  
       
公開時コピー   なぜ、愛する娘は
死んだのですか?
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   中山 麻聖 [as 宗方秀一]
石田 法嗣 [as 森田輝]
小林 涼子 [as 白河早苗]
毎熊 克哉 [as 前田俊]
さな [as 時山望]
水谷 豊 [as 時山光央]
檀 ふみ [as 時山千鶴子]
岸部 一徳 [as 柳公三郎]
 
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あ ら す じ    建設会社の若手社員宗方秀一森田輝は、秀一と会社の副社長の娘・白河早苗の結婚披露宴の打合せに急いでいた。当事者の秀一はもちろん、輝も司会をするということで遅刻してしまいそうなことに慌てていたのだ。ふと、以前、通ったことがある喫茶店スマイルの前を通る裏道を思い出した2人は、そちらに車の向きを変える。
 ところが、不慣れな道であったためか、スマイルの前に通りかかった時、突然目の前に飛び出してきた若い女性を撥ねてしまう。幸か不幸か周りに誰もいなかったため、輝の「人生を終わらせてはいけない」という言葉を受けて、秀一はそのまま女性を放置して打合せ場所のホテルへと向かってしまう。こうして、轢き逃げ事故が成立してしまった。
 結婚式の日が近づく中、早苗は素直に楽しみにしているが、秀一と輝は日々罪の意識に苛まれる日々を過ごしていた。そんな中、2人のもとに動物図鑑の目だけを切り貼りした手紙が届く。まるで“見張っている”ということを伝えているようだった。さらに、結婚式当日には差出人不明の事件のことを匂わす電報まで届く。そして結婚式の翌日、2人は柳公三郎と前田俊の2人の刑事に逮捕されてしまうのだった。
 新婚生活だけでなく、社内の副社長派の総退陣などなど、大きな衝撃を残した中で事件は、集結に向かったと思われたが、一つだけ残った謎を柳が被害者の女性・時山望の両親である時山光央時山千鶴子にぶつける。それは、望の携帯電話が見つからないということだった。そしてこの些細な謎は、やがて事件を思わぬ方向へと導くのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    水谷豊が二度目の監督に加え、脚本まで担当した作品。さぞかし気合いが入っているのだろう、なんて思ったことに加えて、コピーに「この映画の罠に嵌る」なんてあるから、ちょっと期待過剰になってしまった感があって、正直観てみたらちょっとガッカリしたことは確かだった。
 てっきり主役だと思っていた水谷豊が、上映が始まって1時間ほどたっても登場しないのだが、主役は彼じゃなく中山麻聖演じる轢き逃げ犯の宗方秀一だということを、上映後にWebサイトを見て初めて知った。にしては、檀ふみ演じる被害者の母・時山千鶴子に置かれた比重が、水谷豊や岸部一徳はもちろんのこと、主役の中山麻聖や準主役である石田法嗣よりも大きく感じた。登場シーンこそ主役には劣るものの、この作品の肝となる部分を担当していて、締めくくりも彼女だったから。そして、これは余計な邪推だが「もしかして、水谷豊は個人的に檀ふみと夫婦役を演じたかったのか?」なんてことも思ってしまった。
 一応、ドンデン返しと言える展開が用意されてはいるのだが、疑問なのは再度逮捕された輝の罪状が何なのかということ。事故に関して言えば、あくまでも主犯が秀一であるのだが、望を現場に呼び出したのは輝だ。と言うことは、未必の故意による殺人罪でも適用されるのだろうか。その点については、劇中では一切触れられていない。加えて、警察がなぜスピード逮捕と言っていい早さで轢き逃げ犯にたどり着いたのかもわからない。スッキリしない点が多くて、観た後に消化不良を起こしてしまいそうだった。
 石田法嗣の熱演と言ってしまえばそれまでだが、取り調べでの豹変ぶりはあまりにも不自然すぎる。その動機が常に沈着冷静な秀一の慌てた様子が見たかったとは、人ひとりの生命を犠牲にするほどの動機とはとても思えない。もしかしたら、長年親友だと口では言いながら、無意識に輝を見下してきた秀一の態度が積もり積もって、積年の恨みと課していたのかも知れないが、いずれにしてもまともな神経の持ち主とは言えないだろう。そんな事のために愛する一人娘を失った時山夫妻の心情を思うと、何ともやり切れない結末ではあるが、わずかな救いになっているのが早苗の秀一に対する思いで、それを聞き届ける役目になるとは、やはり時山千鶴子の役割は極めて大きいということだろう。