評     価  

 
       
File No. 2999  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年05月17日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   本木 克英  
       
上 映 時 間   121分  
       
公開時コピー   この男、
切ないほどに、
強く、優しい。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   松坂 桃李 [as 坂崎磐音]
木村 文乃 [as おこん]
芳根 京子 [as 小林奈緒]
柄本 佑 [as 小林琴平]
杉野 遥亮 [as 河出慎之輔]
佐々木 蔵之介 [as 佐々木玲圓]
奥田 瑛二 [as 宍戸文六]
谷原 章介 [as 今津屋吉右衛門]
中村 梅雀 [as 金兵衛]
柄本 明 [as 阿波屋有楽斎]
佐戸井 けん太 [as 由蔵]
比留間 由哲 [as 毘沙門の統五郎]
和田 聰宏 [as 東源之丞]
高橋 努 [as 竹村武佐衛門]
荒井 敦史 [as 品川柳次郎]
南 沙良 [as 坂崎伊代]
ベンガル [as 鉄五郎]
桜木 健一 [as 川合久敬]
水澤 紳吾 [as 蔵持十三]
阿部 亮平 [as 黒岩十三郎]
永瀬 匡 [as 上野伊織]
川村 ゆきえ [as さよ]
宮下 かな子 [as 河出舞]
山本 浩司 [as 松吉]
有福 正志 [as 佐兵衛]
菅原 大吉 [as 日村綱道]
陣内 孝則 [as 庄右衛門]
橋本 じゅん [as 甚平]
早乙女 太一 [as 邦右衛門]
中村 ゆり [as 高尾太夫]
波岡 一喜 [as 天童赤児]
石丸 謙二郎 [as 坂崎正睦]
財前 直見 [as 坂崎照埜]
西村 まさ彦 [as 田沼意次]
 
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あ ら す じ    江戸勤番を終え、九州・豊後関前藩に3年ぶりに戻った坂崎磐音と幼なじみの小林琴平河出慎之輔。3人は共に佐々木玲圓に剣を学んだ修行仲間であっただけではなく、琴平の妹・は慎之輔に嫁いでいたため、2人は義兄弟でもあった。また磐音も、琴平と舞の妹・奈緒との祝言を控えており、3人はただの幼なじみ以上の深い絆で結ばれた関係だった。
 ところが、これから磐音と奈緒との祝言という運びになったとき、大変な事件が勃発する。慎之輔が叔父の蔵持十三から「舞が不貞を犯した」という話を吹き込まれ、激昂した慎之輔は舞を手討ちにしてしまったのだ。それだけではなく、舞の亡骸を引き取りに行った琴平は、慎之輔に噂を吹き込んだ蔵持十三を斬り捨てたばかりか、自分の過ちに気づいて「舞は自分の妻だ」と琴平が亡骸を連れ去るのを制しようとした慎之輔本人までをも斬ってしまう。
 藩からは琴平を上意討ちするようとの沙汰が目付頭・東源之丞に下されるが、琴平はこれに素直に従おうとせず、妹の伊予から事の真相を知らされた磐音は自分ならば琴平も手向かいしないだろうと助け船を出す。ところが、相まみえた磐音に対し、琴平は尋常の勝負を申し出る。死闘の末に琴平を討ち取った磐音は、実の兄を殺した以上、奈緒と一緒にはなれないと、奈緒を残し脱藩して江戸へ向かった。
 江戸で浪人として長屋暮らしを始めた磐音は、収入源がなく家賃の支払いも滞るようになるが、見かねた大家の金兵衛に鰻割きの仕事や、両替商・今津屋の用心棒の仕事を紹介してもらいなんとか事なきを得る。穏やかで優しいのにいざという時には剣が立つ磐音は次第に周囲から頼られる存在になっていき、今津屋の女中で金兵衛の娘・おこんにも好意を持たれるなど江戸暮らしも様になってくる。
 そんな折、今津屋の主人・吉右衛門が南鐐二朱銀をめぐる騒動に巻き込まれる事件が起き、磐音は用心棒として敵対する阿波屋有楽斎やその手の者から今津屋を守るために立ち向かうのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    松坂桃李主演の時代劇だが、元になったNHKのドラマでは山本耕史が演じていた役柄だったはず。私はNHKは一切観ないから、実家を訪れた際に何度かチラッと目にした程度だが、私の親父曰く「殺陣が斬新」とのこと。その山本耕史の殺陣と比べると、「松坂桃李、殺陣に慣れてないな」とすぐに思ってしまうほどぎこちなさを感じてしまったのは残念。私が観ていていつもあまりに見事で感心させられるのは松平健が演じる吉宗の殺陣なのだが、さすがにあのレベルに達するには一朝一夕では無理だろうけど、せめて山本耕史レベルくらいは・・・・・なんて思うのは欲張りだろうか。
居眠り磐音の居眠り剣法・・・・・なんて、現実にあんな剣法はあり得ないだろう、と、ちょっと重箱の隅をつつくような真似をしてみたくなる。下段の構えというのは実際にあるのだが、下段から上へ斬り上げるという太刀筋は、邪道ならともかく正式に剣を学んだ者にはあり得ない。だから、一旦上に振りかぶらなければならず、その分上段や中段よりも不利になるのは明らかだ。その上に、目を閉じて片手を離すなんて、相手を激昂させるだけで何のメリットもないし、あんな構えをとる者は絶対に強いはずがない。
 とまぁ、ケチをつけるところから始めてしまったものの、木村文乃演じるおこんが必死で磐音をもり立てようとしているのがいじらしく、また、今まで観たなかでは最も可愛らしく見える三根京子は、現代劇よりも時代劇のメイクの方が似合っていて、元々どちらかと言えば古風な顔立ちなのだろう。磐音と金兵衛、おこんの3人の掛け合いは所々クスッとできて、谷原章介演じる吉右衛門の清廉潔白さとそれに対して阿波屋有楽斎を演じる柄本明の、いかにも悪役の王道を突き進む怪演ぶりと、時代劇ファンじゃない若い世代が観ても決して退屈しない作品になっている。欲を言えば、河出慎之輔を演じた杉野遥亮だけは演技が堅くて、少々浮いていた気も・・・・・。
 その反面、理解に苦しむ点が少なくない作品でもある。そもそも、慎之輔の叔父・蔵持十三は、いったい何の得があって慎之輔を騙したのか。単なる嫌がらせにしては簪を盗んだりするなど、ちょっと手が込み過ぎている。そして、琴平を斬った磐音が、奈緒の兄を斬ってしまったというのはわかるが、藩からは上意討ちの命令が下っていたのだから、脱藩して浪人になる必要があったのか。後の手紙で、奈緒も兄を討った磐音に対して恨む気持ちなど微塵もなく、むしろ竹馬の友である琴平を討たねばならなかった磐音の心痛だけを気にしていたから、まずは奈緒に会うべきだったのに。そうすれば、2人はめでたく・・・・・とはいかないまでも、夫婦になることはできたはずだ。