評     価  

 
       
File No. 3002  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年05月24日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ピーター・ヘッジズ  
       
上 映 時 間   103分  
       
公開時コピー   救えるとしたら、
私しかいない
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジュリア・ロバーツ [as ホリー・バーンズ]
ルーカス・ヘッジズ [as ベン・バーンズ]
コートニー・B・ヴァンス [as ニール]
キャスリン・ニュートン [as アイヴィー・バーンズ]
レイチェル・ベイ・ジョーンズ [as ベス・コンヤーズ]
デヴィッド・ザルディヴァー [as スペンサー]
マイケル・エスパー [as クレイトン]
ティム・ギニー [as フィル]
マイラ・ルクレティア・テイラー [as サリー]
 
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あ ら す じ    クリスマス・イヴ、ニューヨーク州郊外。ベン・ハーンズは久し振りに実家へと帰省するが、家族は家を留守にしていた。そこへ、教会で開催されるクリスマスイベントのリハーサルを終えたホリー・バーンズ子どもたちを連れて車で帰宅する。息子との思わぬ再会に、ホリーは満面の笑顔でベンを強く抱きしめるのだった。
 ベンは、更生施設にて麻薬依存症が大きく改善されたため、支援者からクリスマスを家族と一緒に過ごす許可を得たと報告するが、ベンの妹・アイヴィー・バーンズは車から降りることもなく、義父のニールに帰宅を急かすメッセージを送信する。
 夫婦で話し合った結果、「ベンが尿検査を受けること」「尿検査をクリアしたとしてもホリーが常時ベンを監視すること」という2つを条件に、1日だけ滞在を許可する。提示された条件を素直に飲むベン。そして、尿検査の結果も陰性だったことに安堵したホリーは、幼い妹や弟にクリスマスプレゼントを買いたいと言うベンの頼みを聞き入れ、一緒にショッピングモールへ出かける。
 その晩、ホリーは家族一緒に教会へと出かけるが、帰宅すると家が何者かによって荒らされていた。物は盗まれていなかったものの、犬のポンスの姿が消えていた。帰って来たお前のせいだとニールに責められたベンが家を飛び出すと、ホリーは警察に通報しようとするニールを止め、車で彼の後を追うのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    今ひとつ面白味に欠けるように感じた作品。オフィシャルサイトには「圧倒的な存在感を放つロバーツ、まさにキャリアの頂点」なんてコメントがあるが、彼女ほどのキャリアを積んでいればこの作品で見せたような演技は当たり前で、騒ぎ立てるほどのことはないと思う。むしろ目立っていたのは、ベンを演じたルーカス・ヘッジズと、アイヴィー役のキャスリン・ニュートンで、既にオスカーのミネート経験があるルーカスはともかく、キャスリンはまだまだ引き出しをたくさん持っていそうで、少なくともシアーシャ・ローナンなどよりは遥かに魅力的な女優だ。
 冷静に考えれば、ベンが特別に帰宅を許可されたとすれば、施設から連絡があるはずで、それもないのにベンが帰ってきたということは、間違いなく無許可で抜け出してきたのだ。そのくらは察しろよ、と言いたいが、予想外の息子の帰りがそんなに嬉しかったのだろうか。その点、アイヴィーは冷静で、喜びよりも不安が大きい彼女は義理の父・ニールに連絡している。そして、このシーンでの、ホリーが何ら疑問を抱くことなく手放しでベンの帰還を喜んだことに対する違和感がずっとつきまとって離れなかった。いや、違和感と言うよりも“不安定さ”と言った方が正しいだろう。これ以降、私は観ていて常に綱渡りをさせられているような感覚にとらわれたのだ。
 以降のベンの行動が、果たして善意から出ているのか、あるいは底知れないところにある悪意によって動かされていたのか。彼が何をするのを観ても、まずはそのことが頭に浮かぶ。おそらくは、ベンが家族に対している時は、悪意はなかったのだろうと、今は思う。だからこそ、単身犬のポンスを取り戻すために、危険な状況へ踏み込んでいったのだ。ただ、それほど真剣に家族を思えばこそ、施設を抜け出すようなことはせず、きっちりと完治して誰からも文句を言われない状態で帰るべきだったのだが、彼にはそこまで考えが及ばなかったということなのか?抜け出したとわかれば、家族が腫れ物に触るような扱いをすることは間違いなく、それで居心地の悪さを覚えるのは彼自身なのに。
 この作品を観終えた後、どこか現実感が欠如しているように思えたのも、実は人間の心理を正確に捉えて脚本を書き、映像化するという段階に手落ちがあったためのような気がする。だから、何ら胸に迫るような感動もなければ、有無を言わせないような説得力もなかった。同じ10代の青年の母親役を持つ母親役という点で比べれば、先日観た『ある少年の告白』のニコール・キッドマンの方が遥かに母親らしく見える。