評     価  

 
       
File No. 3014  
       
製作年 / 公開日   2018年 / 2019年06月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   石井 裕也  
       
上 映 時 間   120分  
       
公開時コピー   この世界は
悪意に満ちている。
でも
町田君がいる。
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   細田 佳央太 [as 町田一]
関水 渚 [as 猪原奈々]
岩田 剛典 [as 氷室雄]
高畑 充希 [as 高嶋さくら]
前田 敦子 [as 栄りら]
池松 壮亮 [as 吉高洋平]
戸田 恵梨香 [as 吉高葵]
佐藤 浩市 [as 日野]
北村 有起哉 [as 町田あゆた]
松嶋 菜々子 [as 町田百香]
 
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あ ら す じ    4人の弟妹と身重の母百香とともに目覚めた町田一は、夕食にハンバーグをリクエストされるとそれで頭がいっぱいになってしまい、そのせいで美術の授業中に怪我をしてしまう。手当のために町田が保健室に行くと、そこには授業をサボっていた猪原奈々がいた。自分のハンカチを使って手当てをしてくれた猪原に全力で感謝の言葉を告げる町田に、彼女は戸惑ってしまう。
 人間不信気味の猪原にとって、誰にでも全力で善意を示そうとする町田の姿は理解できなかった。人が嫌いという猪原に対して、僕は大好きだよと言い放つ町田に調子が狂ったままだった。一方、猪原が人が嫌いという事実にショックを受けた町田を、クラスメイトの栄りらは「猪原の性格形成には家の事情が関わっているのでは?」と語るのだった。
 週刊誌記者の吉高洋平は、したくもない仕事に追われ、妻ともすれ違いの日々を送る、そんな世界に絶望していた。上司の日野からは次のスクープを撮ってこいとせがまれ、書きたいものが書けなくなっていた。そんな彼の前に“劇的イイ人”な町田君が現れ、彼の心を大きく揺さぶる。
 モデルをしている氷室雄は、そのチャラい性格が災いして恋人の高嶋さくらから別れを切り出される。その場を見ていた町田はいつもの感覚でさくらを慰めるが、傷ついていたさくらはその行為以上の温かみを感じ取ってしまい、町田に好意を寄せ始めてしまう。
 思わぬ存在に心揺れる猪原は、恋愛についてあまりにも鈍感な町田にイライラをぶつける。そして、さくらに好意を示された町田は恋愛について初めて考え始める。ただ、さくらの気持ちはまだ氷室のもとにあるのではと感じてはいた。やがて、猪原という存在によって自身のうちに今までにない感情が生じていることに気付き、戸惑う町田だったが、その一方でいよいよ臨月を迎えた母親のことも心配で、いつになく頭がいっぱいだった。
 六人目の弟妹誕生に合わせて、世界中を飛び回っている生物学者の父・あゆたが帰ってくると、町田はすぐさま自分の気持ちについて相談を持ち掛ける。そしてついに、猪原への気持ちが恋だと確信した町田。しかし、猪原は海外留学を決めて転向すると担任から告げられる。必死になって彼女を追いかける町田。その背中を栄や最初に恋の相談をした西野。互いの気持ちに真剣に向き合ったことでよりを戻した氷室とさくら。そして、毎日のように町田の善意を受け取ってきた学校中の人間が町田の背中を押すのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    とにかく主役クラスの俳優・女優が惜しげもなく起用されている、そのキャスティングの豪華さに惹かれて観た作品。主人公の町田一を演じた細田佳央太が、オーディションで選ばれたとあったから演技経験がないのかなと思ったら、演技経験がないのは猪原奈々役の関水渚で、細田佳央太の映画の主演は初めてだが、すでに何作かに出演しているようだ。
 クラスメイトや同級生役などの脇役に豪華俳優を充てたのは成功している。なかでも気に入ったのは前田敦子演じる栄りらで、全てを悟りきって諦観したようなキャラター(実はそうではないようだけど)が非常に面白い。岩田剛典があんなチャラいキャラクターを演じるのは初めて観たが、ラストではキャラが180度変わったのでは?と思えるほどいい奴だったし、高畑充希はさすがに安心して観ていられる。その一方で、佐藤浩市や戸田恵梨香は完全に無駄遣いとしか思えず、彼らのキャラクターが活かされていないのはもったいない。
 こういう作品は嫌いじゃなく、超絶珍種の町田一のやること成すことがことごとく予想を裏切ってくれるのがいい。とは言っても、基本は“あり得ないファンタジー”だ。主人公の町田一の存在自体が現実味が全くないのはともかく、ラストで猪原奈々を町田が追いかけるシーンに至っては、「メリー・ポピンズじゃないんだから」と言いたくなる。とにかく唖然とさせられて、それまで盛り上がった感情をすべて台無しにするようなものだった。