評     価  

 
       
File No. 3016  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年05月31日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐藤 佐吉  
       
上 映 時 間   67分  
       
公開時コピー         

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   浅川 梨奈 [as 芽衣]
和田 聰宏 [as 里親(父)]
三津谷 葉子 [as 里親(母)]
松嶋 亮太
しゅはま はるみ [as 校長]
安藤 なつ
笹野 鈴々音
北 香那 [as ラナ]
 
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あ ら す じ    キリスト教系の養護施設の校庭のブランコに座り、ラヴェルのボレロを鼻歌で歌う孤児の少女・芽衣。それを窓から見るシスター姿の校長。校長は、一度も言葉を発しない少女のことを「あの子、壊れているよ」と鬼の形相で言い放つ。しかし、不自然に明るい喋りの夫婦は、芽衣を引き取ることになった。
 一言も発さず不機嫌そうに俯いたまま車に乗せられ、畑の中にポツンと建つ家に連れてこられる芽衣。家には前日に引き取ったという松葉杖の少女・ラナもいて、里親夫婦と元孤児の少女2人の奇妙な4人暮のらしが始まる。どちらの少女も無表情のままで、ぎこちない夕食をとることに。と、芽衣は後ろに何かの気配を感じるが、怯えた感じでゆっくり振り向くと、そこには何もいなかった。
 ラナは、「隕石が落ちてきて地球が滅亡する」と疑わない変わった少女だったが、話していくうちに2人の趣味や誕生日までも同じということがわかり、芽衣とラナは本当の姉妹のように仲良くなっていく。ところがある日、父親の事業が失敗したために、2人のうちどちらかを手放して養護施設に戻さないといけないと告げられる。
 1週間後にどちらを残すか決めると宣言された次の日から、奇妙な出来事が起こる。妻の大切な花瓶が割られたり、夫の車に傷がついたり、ラナの松葉杖が折られたり、芽衣が道路に突き飛ばされたりする。芽衣はラナが自分を陥れようとしているのかと疑う芽衣だったが、どちらか一人が養護施設に戻されるという前日の夜にラナに呼ばれた芽衣は、宇田夫妻の秘密の会話を聞いてしまう。「結局、2人とも引き取れなくなった」と伝えた時の絶望の顔が楽しみだと話す夫妻。彼らは、子供たちを養護施設から引き取って、幸せを与えた後に追い出すことによって、絶望する顔を見て自分たちの快楽を得ていたのだった。
 騙されていたと気づいたラナは、夫妻を殺してしまうという驚くべき提案を芽衣に持ちかけるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    5月31日公開のこの作品、完全に見落としていたのだが、ひょんなことから浅川梨奈が主演と知って急遽劇場へ向かった。67分という、前回の彼女の主演作『血まみれスケバンチェーンソーRED』と同様に短い尺で、やはり2部構成になっている。前編に当たる今回が『黒い乙女Q』、そして後編に当たる次回作が『黒い乙女A』、つまりは全編で問題提示(Question)をして後編で全てが明かされる(Answer)ということなのだろう。
 まず結論を言うと、少なくとも先日の『貞子』と比べると、池田エライザも浅川梨奈に劣らず好きな女優とは言え、こちらの方が遥かに面白いし、何より脚本が秀逸だ。これだけ短い尺だと、前後編を合わせても130分程度だから、いっそのこと1本にまとめてしまってもいいような気はした(同じ事を『血まみれ〜』の時にも書いたけど)。ただ、配給側としては2作に分けることで単純に興収は2倍になるわけだし、やはりレイトショーのみの上映だから、観る側としては帰宅時間を考えても助かるのは確か。ただ、盛り上げるだけ盛り上げておいて“お預け”を食らうというのは、次作への期待が嫌が応でも高まるのはいいけど、『A』が公開になる8月まで記憶が保つかどうかがちょっと心配だ。
 冒頭で登場した、和田聰宏と三津谷葉子が演じる里親夫婦の異様な明るさと明らかに不自然なハイテンションが相俟って、「コイツらの裏には、絶対何かドス黒い意図が隠されている」と思わせる。これは2人の演技が下手だからじゃなく、逆に上手いから観ている者をまんまと作品中へ引きずり込んでしまうのだ。そして、校長を演じたしゅはまはるみ、どこかで見た名前だと思ったら、『カメラを止めるな!』の「ポン!」のお姉さんだったことを思い出した。
 また、北香那が演じる片脚が不自由な少女・ラナだが、彼女が松葉杖を持つならば、不自由な右足とは逆側の左手じゃないだろうか。ただ、そんな素人でも指摘できるような不具合に誰も気づかずに、そのまま制作してしまったとは考えにくいから、実はこれも後編への伏線で、何らかの理由があって敢えて逆に持たせているのかもしれない。そして、安藤なつ演じる鍋をおたまで叩きながら「人殺し!」を連呼する近所のオバサンにも、実は意味があったわけで、これは非常に脚本が非常に巧妙に仕組まれているという証左だろう。
 ラスト近くでは、登場人物の意外な力関係が明らかになるのだが、それによって謎はさらに高まる。里親夫妻は、一体芽衣をどうしたかったのか?芽衣が地下牢のような場所に幽閉されてしまったのは、里親を殺したことを後悔したことが理由で、その後悔がなければお眼鏡にかなっていたのか?また、地下牢にいた2人は何者なのか?すべての疑問の回答は『A』に委ねられているわけで、8月の続編公開が待ち遠しい。