評     価  

 
       
File No. 3018  
       
製作年 / 公開日   2017年 / 2019年06月14日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   デスティン・ダニエル・クレットン  
       
上 映 時 間   127分  
       
公開時コピー   「自分らしく生きる幸せ」
教えてくれたのは、大嫌いだった父
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ブリー・ラーソン [as ジャネット・ウォールズ]
ウディ・ハレルソン [as レックス・ウォールズ]
ナオミ・ワッツ [as ローズマリー・ウォールズ]
エラ・アンダーソン [as 少女時代のジャネット]
チャンドラー・ヘッド [as 幼い頃のジャネット]
マックス・グリーンフィールド [as デヴィッド]
ジョシュ・カラス [as ブライアン]
チャーリー・ショットウェル [as 少年時代のブライアン]
イアン・アーミテージ [as 幼い頃のブライアン]
セーラ・スヌーク [as ローリ]
セイディー・シンク [as 少女時代のローリ]
オリヴィア・ケイト・ライス [as 幼い頃のローリ]
ブリジット・ランディ=ペイン [as モーリーン]
シュリー・クルックス [as 少女時代のモーリーン]
エデン・グレイス・レッドフィールド [as 幼い頃のモーリーン]
ロビン・バートレット [as エルマ]
ジョー・ピングー [as スタンリー叔父]
 
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あ ら す じ    1989年、ニューヨーク。ジャネット・ウォールズは“ニューヨーク・マガジン”で活躍する人気コラムニストだった。富裕層が集まるマンハッタン、パークアベニューの瀟洒なアパートメントにファイナンシャル・アドバイザーである恋人のデヴィッドと暮らしている。
 ある夜、彼の顧客と高級レストランで会話を交わす中、ジャネットの両親について質問が及ぶ。「母はアーティストで、父は起業家です。質の悪い漂青炭を効率よく燃やす技術を開発しています」。実は、これは使い慣れた彼女の嘘だった。そして、レストランからの帰り道、車道に飛び出してきたホームレスの男性を見かける。それは、ストリートで自由気ままに暮らす彼女の父・レックス・ウォールズだったが、ジャネットは知らないふりを装う。何もかもが規定外だった父と母との記憶をたどり出しながら。  レックスはいつか家族のために「ガラスの城」を建てるという夢を持つエンジニア、母親・ローズマリー・ウォールズは売れない画家で、彼らは定職につかず理想や夢ばかりを追い求め、自由気ままに暮らしていた。物理学や天文学などを教えてくれる父・レックスは、ジャネットたち兄弟にとってカリスマ的な存在で、幼いながらも聡明なジャネットのことを彼は「チビヤギ」と呼び、愛情を注いでいた。しかし、仕事が上手くいかないレックスは次第に酒の量が増え、家で暴れるようになっていく。やがて、高校生になったジャネットは大学進学をきっかけに、ニューヨークへと旅立ち、両親との関係を断とうとするが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    私がブリー・ラーソンという女優を初めて観た『ショート・ターム』、この作品はその時と同じ監督×主演女優のコンビで描かれた実話。ブリー・ラーソンって、もちろん先日のナオミ・スコットのような誰が見ても美女というようなルックスではないのだが、なぜか気になる女優であることは確かで、そのことを『キャプテン・マーベル』を観て確信した。そうでなければ、この作品も劇場で観ずにスルーしていたかもしれないし、あるいは全く目に留まらずに知らずにいたかもしれない。
 そして、やはり彼女は女優としては魅力的だった。両親を疎ましく思い他人には虚像である両親像を語りながらも、子どもの頃の思い出を捨てきれずにいるジャネット。「血は水よりも濃し」と言うことなのだろうか。そんな彼女のダメ両親を演じているのは、ウディ・ハレルソンとナオミ・ワッツという、私のお気に入りに属する2人で、クセ毛という設定からウィッグ装着を余儀なくされたウディの外観はまるで別人のようだけど、目から鼻へのラインはやはりまぎれもないウディ・ハレルソンだった。
 ウディ演じるレックスは、確かにダメ夫でありダメ父親ではあるのだが、それでもジャネットが彼を完全に断ち切ることができなかったのは、結局実現できなかったガラスの城を筆頭に、彼が語った大言壮語、それは決して悪意から出たものではなかったということ。ジャネットを思い家族を想ったレックスの気持ち、それはまぎれもない本物だったのだ。ただ、何が何でも目的を達成しようという強い意志が欠如していて、約束を守ることができない自分の不甲斐なさを忘れるために酒に逃げて結果酒に溺れてしまったのだ。
 ナオミ・ワッツ演じるローズマリーもある意味レックスと似たもの夫婦であって、彼女の場合は逃げ場所が酒ではなく絵だったのだろう。そう、夫婦共に精神的に弱い人間で、互いに今のままではいけないことを知りながらも、現実逃避をしていたということになる。そんな2人の娘であるジャネット、彼女が両親を切り捨てることができなかったのは、決して彼女の弱さゆえではないだろう。むしろ、自分の恥ずべき汚点でしかなかった両親から目を背けることなく、2人が自分の両親であることを受け入れながらも前進しようという、強い意志の現れだったのではないだろうか。
 余談になるが、レックスのジャネットへの泳ぎの教え方、あれはどう観ても厳しく教えてるんじゃなくて、児童虐待だろう(笑)。