評     価  

 
       
File No. 3045  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年07月26日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   山崎 貴  
       
上 映 時 間   130分  
       
公開時コピー   これは、  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   菅田 将暉 [as 櫂直]
舘 ひろし [as 山本五十六]
柄本 佑 [as 田中正二郎]
浜辺 美波 [as 尾崎鏡子]
笑福亭 鶴瓶 [as 大里清]
小林 克也 [as 大角岑生]
小日向 文世 [as 宇野積蔵]
國村 隼 [as 永野修身]
橋爪 功 [as 嶋田繁太郎]
田中 泯 [as 平山忠道]
 
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あ ら す じ    1933年(昭和8年)。欧米列強との対立を深め、国際連盟を脱退して軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省では、海軍少将・嶋田繁太郎と造船中将・平山忠道らの世界最大の戦艦建造推進派と、一方で「今後の海戦は航空機が主流」という持論をもとに、戦艦ではなく空母を建造するべきだと主張する海軍中将・永野修身と海軍少将・山本五十六らの二派が対立していた。巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いか、独自に見積もりを算出して明白にしようと考えていた山本だったが、戦艦に関する一切の情報は、建造推進派の者たちが秘匿している。必要なのは、軍部の息がかかっていない協力者だった。
 そんな折、山本が目を付けたのは、100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直だった。ところがこの櫂という男は、数学を偏愛し、大の軍隊嫌いという一筋縄ではいかない変わり者だった。頑なに協力を拒む櫂に、山本は衝撃の一言を叩きつける。「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始める」。この言葉に意を決した櫂は、帝国海軍という巨大な権力の中枢に、たったひとりで飛び込んでいく。こうして、天才数学者VS海軍というかつてない頭脳戦は始まった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    フィクションとは言え、私があまり好んでは観ない戦時中のお話で、キャストも浜辺美波が出演しているのを除けば非常に地味だったので、あまり期待はしていなかったのだが、これが予想外に面白かった。金曜日の仕事を終えての鑑賞だったから、下手な作品では睡魔との戦いに終始してしまうところだし、また、120分を超える尺の作品は終わりが気になって仕方ないところなのだが、いずれも全く気にならなかったということは、面白かったという証拠だろう。
 海軍内の戦艦建造派VS空母建造派の対立に主役の菅田将暉演じる櫂直が巻き込まれていくのだが、軍隊嫌いの櫂が軍隊に手を貸す事になった決め手が、山本五十六の「日本は戦争を始めてしまう」という言葉だった。一見すると山本ら空母建造派が正義のように錯覚してしまいがちだが、よく考えれば空母の建造も何のために行うのかと言えば、とどのつまりは戦争のためであって、櫂を説き伏せた山本の言葉は実は詭弁に過ぎないのだ。それどころか、櫂自身もまた田中泯演じる平山の、やはり詭弁に乗せられて、巨大戦艦建造に抗えなくなったようにさえ見受けられる。結局は、大和の建造費用を算出するために払った労力はすべて無意味だったことになり、原作者の三田紀房やこれを映画化した山崎貴監督は、この作品をもって何が言いたかったのかが見えてこない。
 そして、山本が語っていたとおり日本は真珠湾に奇襲攻撃を仕掛けて太平洋戦争を始めてしまうし、一旦は白紙になったはずの巨大戦艦も建造されてしまうだ。おそらくは、戦艦対戦艦であれば強力な戦力となた戦艦大和だが、山本の言っていた通り的は戦闘機による空中戦がメインで(その点だけで言えば、山本ら空母建造派の理論の、嶋田らの戦艦建造派に対する完全勝利と言っていい)、大和はその本領を発揮する間もなく海の藻屑と消えてしまうのだ。何と勿体ないことだろう。
 大和が沈没するシーンがいきなり冒頭で展開されるのだが、ちょっと残酷な描写もあって、そこまでする必要があったのかは疑問だ。まぁ、作品中で数少ないVFXの最大の見せ場だというのはわかるけど。