この作品、そもそもタイトルを見た時から『アイネクライネナハトムジーク』って何なんだ?せめて“・”を打って『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』(Eine Cleine Nacht Musik = A Little Night Music)くらいにできなかったのか?と反感を覚えて、あまり乗り気がしなかった。で、観てみたら、やっぱり劇場で観るほどの作品じゃないと確信した。すでに手遅れだけど(笑)。
原作は伊坂幸太郎の同名小説のようで、東野圭吾もそうだが、伊坂幸太郎も言うほど面白い小説を書いているとは思えない。キャスティングはそこそこ豪華だし、脚本と監督の技量で傑作を駄作に貶めているとも考えにくいから、これはやはり原作の力不足なのだろう。主人公の三浦春馬演じる佐藤と多部未華子演じる本間紗季、矢本悠馬演じる織田の一家、佐藤の先輩で原田泰造演じる藤間とその妻、貫地谷しほり演じる美奈子とボクサーのウィンストン小野という、4組の人間関係を絡めてストーリーが繰り広げられるのだが、「だからどうした?」と思うだけで、どのエピソードをとっても気持ちが動かされることはかった。思うに、あまりに欲張って詰め込んだために、どのエピソードをとっても中途半端になっている気がする。
主人公2人の関係が、観ていてもどかしさのあまりイライラさせられてしまう。佐藤の煮え切らない態度も態度なら、対する紗季も一体佐藤の何が気に入らなくてああなのか。そもそも、10年も付き合っていたら、とっくに結婚しているか、あるいはとっくに破局を迎えているかのどちらかで、2人のように一緒に暮らしながらも籍は入れていない、なんて関係が続くとはとうてい思えない。