評     価  

 
       
File No. 3098  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年10月11日  
       
製  作  国   イギリス  
       
監      督   ダニー・ボイル  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー   昨日まで、世界中の誰もが知っていたビートルズ。
今日、僕以外の誰も知らない
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ヒメーシュ・パテル [as ジャック・マリク]
リリー・ジェームズ [as エリー・アップルトン]
ソフィア・ディ・マルティーノ [as キャロル]
エリーズ・チャペル [as ルーシー]
ミーラ・シャル [as シーラ・マリク]
ハリー・ミシェル [as ニック]
ヴィンセント・フランクリン [as ブライアン]
ジョエル・フライ [as ロッキー]
マイケル・キヌカワ [as Himself]
カルマ・スード [as 若き日のジャック]
サンジーエフ・バスカール [as ジェド・マリク]
カール・テオバルド [as テリー]
アレクサンダー・アーノルド [as ギャビン]
エド・シーラン [as Himself]
 
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あ ら す じ    売れないシンガーソングライターのジャック・マリクが音楽で有名になるという夢をあきらめた日、世界規模で12秒間の謎の大停電が発生する。真っ暗闇の中、交通事故に遭ったジャックは意識を失い、病院に担ぎ込まれる。彼が目を覚ますと、そこはなぜか歴史上からビートルズの存在が完全に消えた世界になっていた。
 壊れてしまったギターの代わりにと、彼の幼馴染みでマネージャーを務めるエリーから新しいギターをプレゼントされたジャックは、仲間たちから何か弾いてくれと頼まれる。ジャックが弾き語りでビートルズの“イエスタデイ”を披露すると、エリーは初めて聴く美しいメロディに驚き、大感動してしまう。
 以来、ジャックがビートルズの曲を歌うとライブは大盛況となり、SNSで大反響を呼びマスコミからも注目されるようになる。すると、その曲に魅了された超人気ミュージシャン、エド・シーランが突然やって来て、彼のツアーの前座を任されることになる。
 エドも嫉妬するほどのパフォーマンスをジャックが披露すると、ついにメジャーデビューのオファーが舞い込んでくる。思いがけず夢を叶えたかに見えたジャックだったが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーを受賞したダニー・ボイルの監督作・・・・・の割には宣伝が控えめのためもあってか、今ひとつ盛り上がりに欠ける公開となった。世界中の誰もがビートルズを知らないという奇想天外な設定だが、実は歴史から消えてしまったのはビートルズだけじゃなく、あの『ハリー・ポッター』も同様に誰も知らないようだ。
 ビートルズの残した曲が名曲なのは確かだが、今の時代に爆発的に受け入れられるかどうかについては、若干の疑問がなくもない。そして、気になるのはそんな世界が元通りに戻るのかどうか、という点なのだが、残念ながらそこまでは描かれていない。ジャックがスターダムの頂点にのし上がった時点で世界が元に戻る、なんていうストーリーになるのかもと思っていたが、そういう大どんでん返しは用意されていなかった。
 そんなジャックを中心に、幼馴染みのエリートのラブストーリーも絡められ、おまけにエド・シーランが彼自身の役割で登場することもあって、ダニー・ボイルの手腕も相俟って、最期まで退屈させないファンタジーに仕上がっていると思う。ただ、前述の通り予想もしないどんでん返しが用意されているワケではなく、結末も予想の範囲内で、あくまで無難に作られたオーソドックスな作品だ。
 主役のジャックを演じたヒメーシュ・パテルは、主演はおろか映画への出演もこれが初めてのようで、その濃〜いルックスの割には演じたジャックが極めてアッサリとした印象で、もっと強烈なインパクトを与えてくれればいいのに、とは思った。その分、幼馴染みのエリー役のリリー・ジェームズがジャックを支援する健気さがたまらない。なのに、ジャックときたらそんなエリーの気持ちにまったく気づかないとは、トンデモない鈍感ヤローだと呆れてしまう。
 結果、ミュージシャンとしての成功の代わりにエリーを失ってしまうという、因果応報の教訓的なところもあって、決して甘いだけのファンタジー作品ではない。また、彼の曲が認められてヒットすればするほど、実は自分の作った曲じゃないのに、という気持ちが募って追い込まれていくあたり、彼が根は真面目で盗作を貫き通せるような図太い神経の持ち主じゃないことがうかがわれて、後味のいいスッキリとした結末を迎えることができる。