評     価  

 
       
File No. 3107  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2019年11月01日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   平山 秀幸  
       
上 映 時 間   117分  
       
公開時コピー   その優しさを、あなたは咎めますか?  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   笑福亭 鶴瓶 [as 梶木秀丸]
綾野 剛 [as 塚本中弥]
小松 菜奈 [as 島崎 由紀]
高橋 和也 [as 大谷]
木野 花 [as 石田サナエ]
渋川 清彦 [as 重宗]
小林 聡美 [as 井波]
坂東 龍汰 [as 丸井昭八]
平岩 紙 [as キモ姉]
綾田 俊樹 [as ムラカミ]
森下 能幸 [as ダビンチ]
水澤 紳吾 [as ハカセ]
駒木根 隆介 [as テッポー]
大窪 人衛 [as フーさん]
北村 早樹子 [as オフデちゃん]
大方 斐紗子 [as おジギ婆さん]
村木 仁 [as ドウさん]
片岡 礼子 [as 島崎佳代]
山中 崇史 [as 島崎伸夫]
根岸 季衣 [as 塚本富子]
ベンガル [as 酒井]
 
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あ ら す じ    長野県のとある精神科病院では、様々な事情や精神的な病を背負った患者たちが暮らしていた。母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受け、死刑の執行を受けながらも一命をとりとめ、精神病院送りにされた梶木秀丸。幻聴に悩まされて暴れるようになり、家族から厄介者払いのように病院に入院させられた塚本中弥。その他にも認知症を抱えた人、家族もおらず身寄りもない人、言葉を上手く話すことができない人など、様々な人が共同生活を送っていた。
 そんな病院にある日、島崎由紀という女子高生がやって来る。彼女は、父親からレイプされ、妊娠し、母親からも冷遇されるなど自宅に居場所を失っていた。由紀は、病院にやって来るなり、屋上へと逃亡し、秀丸の制止を無視して飛び降りてしまう。幸い命に別状をなかったものの流産し、その後病院に入院することとなるのだった。
 秀丸や中弥を中心にして、少しずつ由紀は精神的にも落ち着きを取り戻し、笑顔を見せるようになっていく。しかし、病院の厄介者で、暴力的な男の重宗が、とんでもない事件を起こしてしまうのだった・・・。
 
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たぴおか的コメント    同名小説を映画化した作品だが、退屈しなかったのがせめてもの救いで、微塵も面白いとは思えなかった。そもそも、今まで笑福亭鶴瓶の演技がいいと思えたことなど一度もないし、この作品でもそれは然り。映像を観ている限り非常に古めかしさを感じるのだが、時代設定が過去なのか、それとも現在なのかもわからない。そして致命的なのは、キャラクターの描き込みが不足していて、それぞれがどんな重荷を抱えて今(と言っていいのなら)に至っているのかもわからない。そのため観ている間ずっと霧がかかったフィルターを通して観ているような錯覚を覚えた。
 身内である義理の父からレイプされるというのは、フィクションでは扇情的でネタにしやすいとは思うが、現実にはそうそうある話ではない。しかも、小松菜奈が演じる島崎由紀は、血の繋がりが無いとは言え父の子供を身ごもってしまうのだ。それだけでも人を自殺に追い込むだけの悲惨な出来事なのに、そこから立ち直りかかった由紀が再びレイプされるとは、いくらフィクションだと言ってもそ嫌悪感しか感じられないし、そんな原作を書いた作者には、扇情的な出来事でしか読者の気を惹くことができないのか、と情けなく思えてしまう。だから、原作にはこの映画の欠落した部分を埋める部分がちゃんと書かれているようだが、そんな原作を読む気など微塵も起きない。
 敢えて言うが、原作はいざ知らずこの映画を観る限り、主役はあくまで小松菜奈が演じる島崎由紀であって、梶木秀丸は鶴瓶の演技の技量もあって単なる脇役の一人でしかない。さらに言わせてもらうと、綾野剛演じる塚本中弥などはいてもいなくても同じで、こんな作品に彼を起用したのは無駄遣い以外の何物でもないだろう。
 こんな、ただただ重苦しいだけで深みのない作品を観るのは、まるで自分に苦行を敷いているようなものだった。これは、私が常日頃言っている「映画はあくまで娯楽であるべき」というポリシーに反するわけだ。まぁ、難しい理屈をこねるまでもなく、この作品は端的に言って「面白くない」の一言で片付けることができるのだけど。