ワム!の同名ヒット曲をモチーフに描かれた作品、という程度の予備知識だけで軽い気持ちで臨んだ作品だったのだが・・・・・上映が始まり、主演がエミリア・クラークと知って俄然興味が湧いてきた。エミリアと言えば、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』で有名らしいが、海外ドラマを観ない私にとっては、『ターミネーター 新起動』のサラ・コナーであり、『世界一キライなあなたに』のルイーザだ。
『ターミネーター 新起動』では役柄上、あまり表情に変化がなかったが、『世界一キライなあなたに』のルイーザで表情が豊かな女優だと思った。そしてこの作品のケイトは、ルイーザを遥かに上回る様々な表情を見せてくれて、女性版ジム・キャリーか?と思うほどのラバーフェイスぶりだから、彼女の表情を観ているだけでも飽きなかった。
その彼女、最初は居候先の友人の制作物(?)を壊して追い出され、勤務先の店では鍵をかけ忘れて泥棒に入られるなど、感情移入などまったくできない自分勝手なイタいビッチで、「これは、ハズレだったかなぁ」とちょっと後悔するハメに。ところが、トムと出会ってからの彼女は、それまでの自分を見つめ直して徐々に変わっていく、それが実にキュートに演じられていて、冒頭の気持ちはどこへやらで彼女を応援したくなるのを抑えられなくなっていった。
これがハリウッドだと「軽妙なラブコメディ」で終わってしまうのだろうけど、そこはイギリス映画、Last Christmasの歌い出し“♪Last Christmas, I gave my heart”という歌詞をそのまま再現したという触れ込みに偽りなし。というか、“heart”が心じゃなくて心臓と解釈すると、あまりにそのまんまなストーリーには、逆に意表を突かれた感がある。なるほど、道理でトムは神出鬼没なうえにいつも知らない間にフェード・アウトしているわけだ。