評 価
File No.
3155
製作年 / 公開日
2019年 / 2020年01月17日
製 作 国
ド イ ツ / アメリカ
監 督
タイカ・ワイティティ
上 映 時 間
109分
公開時コピー
愛は最強。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
ローマン・グリフィン・デイヴィス
[as ジョジョ]
トーマシン・マッケンジー
[as エルサ]
タイカ・ワイティティ
[as アドルフ]
レベル・ウィルソン
[as Missラーム]
スティーヴン・マーチャント
[as ディエルツ大尉]
アルフィー・アレン
[as フィンケル]
アーチー・イェーツ
[as ヨーキー]
サム・ロックウェル
[as クレンツェンドルフ大尉]
スカーレット・ヨハンソン
[as ロージー]
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あ ら す じ
第二次大戦下のドイツ。10歳の
ジョジョ
は、ひどく緊張していた。今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するのだが、“空想上の友達”
アドルフ
に弱音を吐いてしまう。アドルフから「お前はひ弱で人気もない。だが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まされたジョジョは、気を取り直して家を出る。
ジョジョたち青少年を待っていたのは、戦いで片目を失った
クレンツェンドルフ大尉
や、教官の
ミス・ラーム
らの指導によるハードな戦闘訓練だった。何とか1日目を終えたもののヘトヘトになったジョジョは、唯一の“実在の友達”で気のいい
ヨーキー
とテントで眠りにつくのだった。
ところが、2日目に命令通りウサギを殺せなかったジョジョは、教官から父親と同じ臆病者だとバカにされる。2年間も音信不通のジョジョの父親を、ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていた。さらに、“ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられ、森の奥へと逃げ出し泣いていたジョジョは、またしてもアドルフから「ウサギは勇敢でずる賢く強い」と激励される。元気を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むのだが、失敗して大ケガを負ってしまうのだった。
ジョジョのたった一人の家族で勇敢な母親
ロージー
がユーゲントの事務局へ抗議に行き、ジョジョはケガが完治するまでクレンツェンドルフ大尉の指導の下、体に無理のない奉仕活動を行うことになる。そしてその日、帰宅したジョジョは、亡くなった姉のインゲの部屋で隠し扉を発見する。恐る恐る開くと、中にはユダヤ人の少女が匿われていた。ロージーに招かれたという彼女の名は
エルサ
、驚くジョジョを「通報すれば?あんたもお母さんも協力者だと言うわ。全員死刑よ」と脅すのだった。
最大の敵が同じ屋根の下に!予測不能の事態にパニックに陥るジョジョだったが、考え抜いた末にエルサに「ユダヤ人の秘密を全部話す」という“条件”をのめば住んでいいと持ち掛ける。エルサをリサーチして、ユダヤ人を壊滅するための本を書くことを思いついたのだ。その日から、エルサによるジョジョへの“ユダヤ人講義”が始まった。エルサは聡明で教養とユーモアに溢れ機転も利き、ジョジョは次第にエルサの話と彼女自身に惹かれていく。さらには、ユダヤ人は下等な悪魔だというヒトラーユーゲントの教えが、事実と異なることにも気づき始める。
そんな中、秘密警察の
ディエルツ大尉
が部下を引き連れて、突然、ジョジョの家の“家宅捜索”に訪れる。ロージーの反ナチス運動が知られたのか、それともエルサの存在が何者かに通報されたのか。緊迫した空気の中、エルサが堂々と現れ姉インゲになりすます。その場は何とか成功するが、事態は思わぬ方向へ。大戦が最終局面を迎える中、新たに生まれたジョジョとエルサの“絆”の行方は・・・・・?
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たぴおか的コメント
予告編を観た限りでは、ヒトラーは出てくるし、うっかりでバズーカを誤射するしで、他愛のない爆笑コメディかと思っていたのだが、観てみると趣が少々違っていた。確かにヒトラー(クレジットではAdolph Hitlerではなく単にAdolphとなっていた)は登場するが、『帰ってきたヒトラー』じゃあるまいし本物のワケはなくて、あれはジョジョにしか見えない、いわば彼が心の中で描いた幻影のようなもので、当然他人はその姿を見ることも声を聴くこともできない。
ジョジョは最初は盲目的にアドルフに心酔していたようだが、やがて徐々に(ダジャレではない)接し方が変わってきて、それは彼が大人へと成長していく証でもあり、最後は2階の窓からアドルフを蹴落とす。この作品は反戦という大きな幹を持ち、その枝葉としてジョジョのほのかな恋心や、ちょっとした笑いの要素が彩りを添えている、コミカルだけどコメディではない作品なのだと思う。
この作品を観たかった理由の一つは、スカーレット・ヨハンソンなのだが、その期待に充分に応えてくれているのは嬉しかった。『ロスト・イン・トランスレーション』以来注目し続けてきた彼女だが、その頃と比べると本当に演技が上手くなっている(って、お前どこから視線だ?って感じだけど)。母親役を演じるスカーレットを観るのは、おそらくこれが初めてなのだが、彼女が履く靴がキュートで、ダンスのステップなどやたらアップで靴を見せるシーンがある。と思ったら、思いもよらないシーンで靴に注目させたことが活かされていて、「このための伏線だったのか」と感心する反面、ちょっとショッキングではあった。
また、サム・ロックウェルのクレンツェンドルフ大尉(キャプテンK)がいい味出している。ヒトラーに盲従する崇拝者の一人かと思っていたが、かれもまた戦争という怪物の犠牲者に過ぎない。特に、ラスト近くで徐々に対して「ユダヤ野郎」的な暴言と共につばを吐き捨てるシーンは、この作品最大の感動シーンだった。
おっと、忘れちゃいけないのがスカーレットと共に作品に華を添えてくれた、トーマシン・マッケンジーの存在。彼女のおかげで、最初は得体の知れない生き物だったユダヤ人も、自分と同じ人間なのだとジョジョは学んでいく。戦争が終わり、共に両親を失った少年と少女が、この先どうなっていくのかは知る由もないが、明るく可能性に満ちた未来が開けていたことだけは間違いない。