評     価  

 
       
File No. 3157  
       
製作年 / 公開日   2019年 / 2020年01月17日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   岩井 俊二  
       
上 映 時 間   120分  
       
公開時コピー   君にまだずっと
恋してるって言ったら
信じますか?
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   松 たか子 [as 岸辺野裕里]
広瀬 すず [as 遠野鮎美/遠野未咲(回想)]
庵野 秀明 [as 岸辺野宗二郎]
森 七菜 [as 岸辺野颯香/遠野裕里]
小室 等 [as 波戸場正三]
水越 けいこ [as 岸辺野昭子]
木内 みどり [as 遠野純子]
鈴木 慶一 [as 遠野幸吉]
豊川 悦司 [as 阿藤陽市]
中山 美穂 [as サカエ]
神木 隆之介 [as 乙坂鏡史郎(回想)]
福山 雅治 [as 乙坂鏡史郎]
 
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あ ら す じ    姉・遠野未咲の葬儀に参列した岸辺野裕里は、未咲の娘である鮎美に、未咲宛ての同窓会の案内状と鮎美に遺した手紙の存在を知らされる。未咲の死を知らせねばなるまいと思い、裕里は姉の代理で同窓会へと出席するのだが、彼女は未咲と勘違いされてしまい、結局伝えることはできなかった。
 しかし、同級生が誰も気がつかない中で、1人だけ未咲のふりをした裕里が会場に来ていることに気がついている人物がいた。彼の名前は乙坂鏡史郎、裕里の初恋の相手であり、未咲のかつての恋人だった。
 鏡史郎は裕里が姉に成りすましていることに不信感を覚えるが、彼女への未練を断ち切れないでいたこともあり、裕里と連絡を取ることで、何とか彼女に再会できないかと画策し始める。文通を始める2人は、少しずつ高校生時代の淡い思い出を蘇らせ、そして未咲の存在に囚われたまま、あの頃から一歩も進めないでいた自分たちを自覚するようになる。文通を続ける中で、彼らが見出す次の一歩とは・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    予告編で、あの『天気の子』(私はこの作品はまったくと言っていいほど面白いとは思えなかった)の新海誠監督の「岩井俊二ほどロマンティックな作家を知らない」という旨のコメントが紹介されていたこの作品。岩井作品は『リップヴァンウィンクルの花嫁』や『Love Letter』、『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』などの代表作さえ、劇場はおろかDVDですら観ていなくて、唯一『ヴァンパイア』のみを劇場で観ただけだが、騒がれるほどの才能の持ち主なのか、甚だ疑問に思っていた。そして、その思いはこの作品を観てさらに強くなった。
 予告編を何度となく見せられて、遠野未咲の高校時代役が広瀬すず、その妹役が森七菜、大人になった妹・裕里を松たか子が演じてることを知っていたために、冒頭でいきなり3人が同時に登場したことで混乱させられてしまった。遠野未咲と娘・鮎美を同一人物が演じる必要が果たしてあるのか?それは妹の裕里とその娘・颯香についても然りで、そこから感じられたのはいたずらかつ無意味に技巧に凝ったあざとさだけだった。
 全編を通して透明感がある映像は確かに美しい。けれども、その透明感を高めるために登場人物の描写が見事に表面だけで深みがないこと、さらに言えば人間味が欠如していることが大いに寄与しているように思える。端的に言えばこれは原題のお伽噺で、登場人物に現実の人間臭さ、そして現実の人間の行動理論を求めちゃいけないのかも知れない。そして、“現実感の欠如=ロマンティシズム”だとするならば、先に書いた「岩井俊二がロマンティックな作家」という評価もあながち間違いじゃない。だから、松たか子演じる裕里は、姉の亡くなったことを伝えるためにわざわざオシャレをして代理で同窓会に出席するし、福山雅治演じる乙坂も彼女が未咲じゃなく妹だと知っていながら「君のことを今でもずっと好きだと言ったら信じますか?」なんて歯の浮くようなメッセージを送ったのだ。
 そんな中で、唯一現実の人間味が感じられるのがトヨエツ演じる阿藤陽市だ。作品の中で自分の役柄がどういう立ち位置にあってどう演じるべきかがわかっていて、それを忠実に演技に反映できている、そんな印象を受けた。また、『シン・ゴジラ』の庵野監督が映画出演で、しかも他のキャストの透明感のある演技とは相容れない、下世話な嫉妬や怒りの感情をむき出しとは・・・・・一体この作品はどこを目指しているのか、行き先がわからずに迷走してるんじゃないかとさえ感じてしまった。広瀬すずと森七菜という若い2人の共演が観られたことで良しとすべきなのかな。