評     価  

 
       
File No. 1687  
       
製作年 / 公開日   2012年 / 2012年11月03日  
       
製  作  国   アメリカ / カ ナ ダ / フランス  
       
監      督   パスカル・ロジェ  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   この結末、『マーターズ』を超えた
“ホラー/恐怖”の概念を覆す衝撃!
 

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジェシカ・ビール [as ジュリア・デニング]
ジョデル・フェルランド [as ジェニー]
スティーヴン・マクハティ [as ドッド警部補]
ウィリアム・B・デイヴィス [as チェストナット保安官]
ジェイコブ・デイヴィーズ [as デビッド]
アマンサ・フェリス [as トレイシー]
イヴ・ハーロウ [as クリスティーン]
コリーン・ウィーラー [as Mrs.ジョンソン]
ガーウィン・サンフォード [as ロバート]
ジャネット・ライト [as トリッシュ]
ジョン・マン [as ダグラス]
ティーチ・グラント [as スティーヴン]
フェルネ・ダウニー [as Mrs.パーカー・ライ]
 
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あ ら す じ    広大な森と迷路のような地下道に囲まれた炭鉱の町コールド・ロック。6年前の鉱山閉鎖で急速に寂れたこの町で、次々と幼い子供たちが消えていく連続失踪事件が発生する。犠牲者は既に18人にも及び。謎が謎を呼んで人々は正体不明の誘拐犯を“トールマン”と名付け、恐れていた。
 そんなある晩、夫に先立たれ地元で看護師として働くジュリア・デニングは、自宅から何者かに連れ去られた一人息子のデビッドを追うが、犯人にデビッドを連れ去られてしまう。傷だらけになりながらも町外れのダイナーに辿り着いたジュリアは、女主人から手厚く保護される。
 ところが、そこに集う住人たちはなぜかジュリアを監禁しようとしていた。身の危険を察してダイナーを抜け出したジュリアは、保安官の車に忍び込み、車はとある古びた建物へとたどり着く。そして、やがてそこで想像を絶する真実が明らかになる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この作品の上映館であるN渋谷が、今年の12月2日をもって閉館となってしまうというニュースを先月知り、単館作品ファンの私にとってはシネパトス銀座の閉館と相俟ってダブルパンチを喰らうようなショックだった。しかも、シアターN渋谷は月曜がメンズデーで男性が1,000円、水曜がサービスデーで誰もが1,000円、木曜がレディースデーで女性が1,000円と、非常に良心的な料金で観させてもらっただけに、閉館は痛いことこの上ない。シネセゾン渋谷の閉館、シアターTSUTAYAの閉館、ライズXと併せて3スクリーンあったシネマライズの1スクリーンへの縮小と、このところ単館系のシアターがどんどん減っているのは寂しさを通り越して、危機感すら感じさせる。
 そんなシアターN渋谷での最後のロードショー作品のひとつがこの『トールマン』。あの不愉快この上ない『マーターズ』の監督がメガホンを執っていると知った時から嫌な予感はしていたのだが(『マーターズ』参照)、主演がジェシカ・ビールということもあって、メンズデーの月曜日にシアターN渋谷へ足を運んでみた。
 瓢箪から駒とはこのことで、ジェシカ主演という以外は全く期待していなかったこの作品だが、意外にも単なる“ホラー”などという既成の枠組みには収まらない奥行きの深い作品で、ジェシカが脚本を一読して出演を即決した理由もわかるような気がする。寂れた片田舎の町で、伝説の“トールマン”に子供が次々とさらわれてしまう。そして、ジェシカ扮する主人公のジュリアもまた一人息子を奪われてしまい、当面の興味は“トールマン”とは何者なのか?に向けられる。
 もしも“トールマン”なる怪物が子供たちをさらっていたのであれば、単なるホラーで終わってしまうだろう。ところがこの作品の場合はそうじゃない。超常現象も正体不明のモンスターも存在せず、事件の裏には驚くべき真相が隠されているのだ。しかも、その裏にさらにまた秘密が隠されているという念の入れようで、観終えた後には「この作品で一体何が悪なのだろうか?」と考えさせられることだろう。
 “二転三転するストーリー”なんて謳い文句の作品にガッカリさせられることは少なくないが、この作品のストーリーの展開には本当に意表を突かれる。綿密な下調べと緻密に計算された脚本の為せる技だろう。そして、いくら脚本が秀逸でも、それを俳優が台無しにしてしまうこともあるが、この作品ではジェシカの体当たりの熱演が素晴らしく、同時に観ていてとても痛い(笑)。
 『ローズ・イン・タイドランド』で鬼才テリー・ギリアム監督をうならせたジョデル・フェルランド、大きくなったね。しかも、正統派の美人女優になって。この作品の最後の秘密の鍵を握る重要な役柄だが、安心して観ていられるのはさすがで、今後がさらに楽しみな女優だ。